2010年02月26日
再生不良性貧血とT細胞:金沢大学血液内科 中尾教授より-7
MDSとPNH型血球:金沢大学血液内科 中尾教授より-6 より続く
【中条君の奮闘】
造血幹細胞に対する免疫反応を制御するためには、その細胞が発現している自己抗原を同定することがもっとも重要ですが、前述の理由でT細胞からのアプローチには限界があることを2000年頃に感じるようになりました。
この頃、がん免疫において重要な自己抗原(NY-ESO-1)が、患者血清を用いた抗体スクリーニングという分子生物学的な方法で同定されました(この抗原は、現在もっとも有望ながんワクチンとして臨床試験が行われています)。
T細胞による骨髄の傷害が再生不良性貧血の主たる病態といえども、何らかの自己抗体を同定すれば、それを頼りにT細胞の標的抗原を同定できるかもしれないと考えました。
そこで、当時助教として活躍していた故中条達也君を中心として、自己免疫性再生不良性貧血症例の血清を用いた抗体スクリーニングを開始しました。
最初はアッセイが安定せず苦労したのですが、最終的には中条君が留学生の憑君と岡山大学までアッセイを習いに行った結果、安定した結果を出せるようになりました。
その結果、不飽和脂肪酸のβ酸化を司るdiazepam-binding protein related sequence-1に特異的な抗体が自己免疫性の再生不良性貧血で高頻度に検出されることが分かりました。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 23:03| 血液内科