PNH型血球の意義:金沢大学血液内科 中尾教授より-9
モエシンと再生不良性貧血:金沢大学血液内科 中尾教授より-8 から続く
【患者さんから学ぶ(1)】
骨髄不全病態におけるPNH型血球の意義は、学会・研究会や総説などで繰り返し訴えているうちに、各地の先生方に少しずつ理解してもらえるようになってきました。
4年前に北海道の内科学会地方会で貧血の講演をしたあとに、ある年配の先生が直接私のところに来られ、「MDSと診断した70歳以上の高齢患者さんの血液を2人分金沢大学に送って検査をしてもらったところPNH型血球が陽性だったので、シクロスポリンを投与したら二人とも驚くほどよくなりました。ありがとうございました。」とお礼を言って下さったときには幸せな気分になりました。
しかし、臨床検査としての重要性は確信したものの、PNH型血球が本当に正常骨髄に対する免疫学的な攻撃の結果として出現するのかという点については確信が持てませんでした。
それは何故かというと、PNH型血球陽性の再生不良性貧血患者さんが、再生不良性貧血を発病する前にPNH型血球が陰性であったという証拠がないためです。
ある時点でたまたま受けたフローサイトメトリー検査によりPNH型血球が陰性であった健常者が、その後再生不良性貧血を発症すれば、上記のことを証明できるかもしれません。
しかし、このようなことが起こる確率は何百万分の1にすぎません。良い動物モデルも存在しないため私自身、これは証明することは永遠に不可能と考えていました。
ところが。。。。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 16:50| 血液内科