線溶関連マーカー(6):DICとDVTの合併など
線溶関連マーカー(5):FDP・Dダイマー・PICの高値 より続く
線溶マーカーとは(6)
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FDP・Dダイマー・PIC解釈上の注意点
通常、FDPとDダイマーは併行して上昇することが多いです。
ただし、著しい線溶活性化がみられる病態(例えば線溶亢進型DIC)では、フィブリンのみならずフィブリノゲンの分解も進行するために、FDPの著増に対して、Dダイマーの上昇が相対的に軽度のことがあり、FDP/Dダイマー比が大きくなります(Dダイマー/FDP比が小さくなります)。
この場合、PICは著増し、α2PIやフィブリノゲンは著減しやすいです。
プラスミノゲンも中等度低下します。
一方、線溶抑制型DIC(敗血症に合併したDICに代表されます)においては、t-PAに対して阻止的に作用するプラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor:PAI)が過剰に産生されて、線溶が抑制されます。
このため、血栓が多発してもあまり溶解されずにFDPやDダイマーは軽度上昇にとどまることが多いです。
線溶抑制型DICにおいては、FDPやDダイマーを過度に重要視しますと、DIC診断が遅れる懸念があります。この場合は、血小板数の経時的低下や、凝固活性化マーカーTAT、SFなどに注目することで早期診断が可能です。
FDP、Dダイマー、TAT、PICが最も上昇しやすい疾患はDICですが、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞栓(pulmonary embolism:PE)でも上昇する場合がある点に注意が必要です。
また、播種性血管内凝固症候群(DIC)の基礎疾患とDVT&PEの危険因子は、悪性腫瘍など共通していることがあります。
DIC診断基準をみたすような症例であっても、DVT&PEも合併していることがありますので、注意が必要です。
管理人らは、DVT&PEの見逃されているDIC症例が少なくないのではないかと懸念しています。
【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 12:52| 凝固検査 | コメント(0)