金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年06月09日

血液専門医試験対策:DICの病型分類と臨床症状

リンク:播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液専門医試験対策:DICの疫学 より続く。


 DICの病型分類と臨床症状(血液専門医試験対策)

著しい凝固活性化はDICの主病態であり全症例に共通していますが、その他の点については基礎疾患により病態が相当異なっています。

凝固活性化は高度であるけれども線溶活性化が軽度に留まるDICは、敗血症に合併した例に代表されます。線溶阻止因子PAIが著増するために強い線溶抑制状態となり、多発した微小血栓が溶解されにくく微小循環障害による臓器障害が高度になりやすいですが、出血症状は比較的軽度です。このようなDICを「線溶抑制型DIC」と称しています。

検査所見としては、凝固活性化マーカーであるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex: TAT)は上昇するものの、線溶活性化マーカーであるプラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(plasmin-α2 plasmin inhibitor complex: PIC)は軽度上昇に留まります。また、微小血栓の溶解を反映するフィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products:FDP)やDダイマーも軽度上昇に留まるのが特徴です。



一方、凝固活性化に見合う以上の著しい線溶活性化を伴うDICは、APLや腹部大動脈瘤に合併した例に代表されます。

PAIは上昇せずに線溶活性化が強く、止血血栓が溶解されやすいことと関連して、出血症状が高度になりやすいですが臓器障害はほとんどみられないのが特徴です。このような病型のDICを「線溶亢進型DIC」と称しています。

検査所見としては、TAT、PIC両者とも著増し、FDPやDダイマーも上昇します。フィブリノゲン分解も進行するためにFDP/DD比は上昇(DD/FDP比で表現する場合は低下)しやすいのも特徴です。



凝固・線溶活性化のバランスがとれており上記両病型の中間的病態を示すもの(固形癌に合併したDICなど)を「線溶均衡型DIC」と称しています。進行例を除くと、出血症状や臓器症状は意外とみられにくいです。



(続く)血液専門医試験対策:DICの診断など へ


【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| DIC | コメント(0)

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