金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年06月11日

血液専門医試験対策:DICの治療薬

リンク:播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液専門医試験対策:DICの診断など より続く。



 DICの治療薬(血液専門医試験対策)

DICの進展を阻止するためには、基礎疾患の治療と共に、凝固活性化を阻止する必要があります。基礎疾患の治療を行っても、基礎疾患が一両日中に治癒することは極めて例外的ですから、この間にDICが原因で病態が悪化することを防がなければなりません。


1) 基礎疾患の治療

全症例において、基礎疾患の治療は最重要です。急性白血病や進行癌に対する化学療法、敗血症に対する抗生剤治療などがこれに相当します。

なお、悪性腫瘍(造血器を含む)に対して化学療法を行うと、腫瘍細胞の崩壊に伴ってTFが大量に血中に流入するため、DICが一時的悪化することが少なくないですが、それを理由に基礎疾患の治療を躊躇してはいけません。



2) 抗凝固療法

DICの病態に応じて適切な薬剤を選択します。


(1)ヘパリン類&アンチトロンビン濃縮製剤

DICに対して使用可能なヘパリン類としては、ダナパロイドナトリウム(DS:オルガラン)、低分子ヘパリン(LMWH:フラグミン)、未分画ヘパリンがあります。これらのヘパリン類は、いずれもアンチトロンビン(AT)依存性に抗凝固活性を発揮する点で共通していますが、抗Xa/トロンビン(IIa)活性比や、血中半減期に差違がみられます。

DSは半減期20時間と長いために、1日2回の静注であっても効果が持続する点が魅力です。ただし、腎代謝のため、腎機能障害のある症例や低体重の症例では減量して使用すべきです(他のヘパリン類にも当てはまります)。

ヘパリン類は、AT活性が低下した場合は充分な効果が期待できないため、AT濃縮製剤を併用します。


(2)合成プロテアーゼインヒビター

合成プロテアーゼインヒビター(serine protease inhibitor:SPI)は、AT非依存性に抗トロンビン活性を発揮します。

代表的薬剤は、メシル酸ナファモスタット(NM:フサンなど)および、メシル酸ガベキサート(GM:FOYなど)です。

出血の副作用はまずありません。また、両薬は膵炎治療薬でもありますので、膵炎合併例にも良い適応となります。

NM(
フサンなど)は臨床使用量で抗線溶活性も強力であり、線溶亢進型DICに有効です。ただし、本薬の高カリウム血症の副作用には注意が必要です。

フサン、FOYともに静脈炎の副作用があり、中心静脈からの投与が原則です。


(3)遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤
 

遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(recombinant thrombomodulin:rTM、リコモジュリン)は、近年処方可能になりました。本薬は抗炎症効果を合わせ持ち、特に炎症性疾患に合併したDICに対して、抗凝固、抗炎症の両面から期待されています。



3) 補充療法

血小板や凝固因子の著しい低下(消費性凝固障害)のため出血がみられる場合には、補充療法を行います。

血小板の補充目的としては濃厚血小板、凝固因子の補充目的としては新鮮凍結血漿を用います。



4) 抗線溶療法

DICにおける線溶活性化は、微小血栓を溶解しようとする生体の防御反応の側面もありトラネキサム酸(TA:トランサミン)などの抗線溶療法は原則禁忌です。特に、敗血症に合併したDICでは絶対禁忌です。

また、APL症例において、all-trans retinoic acid(ATRA)による分化誘導療法を行っている場合も、TAを投与しますと全身性血栓症を併発して死亡したという報告が多数見られますので、絶対禁忌です。

ただし、線溶亢進型DICの著しい出血例に対して、ヘパリン類併用下にTAを投与すると出血に対して著効することがありますが、使用方法を間違うと全身性血栓症をきたすために、必ず専門家にコンサルトの上で行う必要があります。

また、線溶亢進型以外のDICに対しては、
トラネキサム酸(トランサミン)は禁忌であるため線溶亢進型DICの診断は万全を期する必要があります。


(続く。。。)血液専門医試験対策:基礎疾患別のDIC治療法 へ


【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 19:46| DIC | コメント(0)

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