急性前骨髄球性白血病(APL)における出血と血栓症
急性前骨髄球性白血病(APL)と言えば、DIC、出血のイメージが強いかも知れません。
しかし、血栓症も重大な問題点です。
「急性前骨髄球性白血病(APL)における出血と血栓症」
著者名:Sanz MA, et al.
雑誌名:Thromb Res 125 Suppl 2 : S51-S54, 2010.
<論文の要旨>
急性前骨髄球性白血病(APL)は、特種な遺伝子変異(PML遺伝子とRARA遺伝子の相互転座)を有する急性白血病であり、致命的な消費性凝固障害(播種性血管内凝固症候群(DIC))を合併することでも有名です。
APLを救命するためには、この凝固異常に対する早急な対応が必要ですが、この点においても全トランスレチノイン酸(ATRA)薬の果たす役割は大きいです。すなわち、ATRAの投与により、凝固異常はしばしば速やかに改善します。また、APLの完全寛解率は90〜95%と高率です。
ただし、APLの寛解導入治療に抵抗性の症例は少なくなってきましたが、出血死は依然としてAPL初期治療時の重要な問題点です。
一方、APLにおける致命的な血栓症の合併も重大な問題であるにもかかわらず、過小評価されているのが現状です。
以上、APLの治療にあたっては、出血と血栓症の両者に対する十分な注意が必要です。
(注意)
APLに対してATRAを投与している場合に、トラネキサム酸(トランサミン)を投与すると全身性の血栓症をきたして、致命症となったという報告が多数みられます。
APLに対してATRA治療を行っている場合は、トラネキサム酸の投与は禁忌です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 出血性疾患 | コメント(0)