小児von Willebrand病患者における出血症状の定量
von Willebrand病(VWD)は、先天性の出血性素因です。
医師国家試験にも毎年のように出題される重要疾患です。
国家試験的には、出血時間の延長、APTTの延長(PTは正常)(血液凝固検査入門)、粘膜出血(鼻血など)、常染色体優性遺伝と言ったところが特に重要でしょうか(血友病とvon Willebrand病の比較)。
この疾患は、見逃されていることが多いのではないかという指摘があります。
実際、管理人が拝診させていただいている患者さんでも、重症例(von Willebrand因子活性が測定感度以下)であるにもかかわず、日常生活で全くと言って良いほど出血しない方が、複数人おられます。
出血の程度を、より客観的に評価することは重要ではないかと思います。
「小児von Willebrand病患者における出血症状の定量(小児用アンケート法による)」
著者名:Biss TT, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 950-956, 2010.
<論文の要旨>
打撲後出血や皮膚粘膜出血は、一般に小児において見られやすいです。本来は、出血の既往を詳細に聴取することで、先天性出血性素因を有しているかどうか判別が可能なはずです。
著者らは、小児出血アンケート(Pediatric Bleeding Questionnaire ; PBQ)を用いて、von Willebrand病(VWD)の小児と、VWDでない同朋に対してインタビューを行いました。小児VWD100例(中央値10.9才:0.8〜17.8才)と、VWDのない21例からアンケートを回収しました。
その結果、出血スコアの中央値はVWD 7点(0〜29点)、非VWD 0点(−1〜2点)でした。出血スコア(中央値)はVWDのサブタイプにより異なっており、type1確診例9.0(n=40)、type1疑診例2.0(n=38)、type2 14.0(n=6)、type3 12.0(n=16)でした。
出血スコアと年齢の間には正相関がみられました(P=0.0004)(加齢とともに出血リスクに遭遇する機会が増加するためと考えられました)。
高頻度にみられる出血症状は、手術時出血、抜歯後出血、過多月経でした。包皮切開術、頭蓋内出血、肉眼的血尿、臍帯断端からの出血も、それぞれ32%、4%、4%、3%にみられました。
以上、PBQは小児VWDの出血重症度を評価する上で、適当であると考えられました。
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43| 出血性疾患