金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年11月13日

敗血症と凝固・DIC(3)炎症と凝固のクロストーク

敗血症と凝固・DIC(2)凝固活性化より続く

関連記事:播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

 

敗血症と凝固・DIC(3)炎症と凝固のクロストークの概念

近年、炎症と凝固のクロストークの存在が数々の報告により明らかにされてきています。

Pawlinski R, Mackman N. Tissue factor, coagulation proteases, and protease-activated receptors in endotoxemia and sepsis. Crit Care Med. 2004; 32: S293-S297.

Pawlinski R, Pedersen B, Mackman N, et al. Role of tissue factor and protease-activated receptors in a mouse model of endotoxemia. Blood. 2004; 103: 1342-1347.

Huerta-Zepeda A, Cabello-Gutiérrez C, Ruiz-Ordaz BH, et al. Crosstalk between coagulation and inflammation during Dengue virus infection. Thromb Haemost. 2008; 99: 936-943.

Niessen F, Schaffner F, Furlan-Freguia C, et al. Dendritic cell PAR1-S1P3 signalling couples coagulation and inflammation. Nature. 2008; 452(7187): 654-8.

Levi M, van der Poll T. Inflammation and coagulation. Crit Care Med. 2010; 38(2 Suppl): S26-34.

すなわち、前述のように炎症(LPS、サイトカインなど)により凝固活性化を生じますが、生じたトロンビンや活性型第X因子は、PARs(Protease-activated receptors)を介して炎症を惹起するというものです。

実際、DICを合併した敗血症モデルに対して、免疫グロブリンを投与しますと、TNFやIL-6と言った炎症性サイトカインの抑制とともに、凝固異常や病理学的な血栓形成が抑制されます。

Asakura H, Ontachi Y, Nakao S, et al. Immunoglobulin preparations attenuate organ dysfunction and hemostatic abnormality by suppressing the production of cytokines in LPS-induced DIC in rats. Crit Care Med. 2006; 34: 2421-2425.

炎症と凝固のクロストークを遮断するような治療は、今後の発展が期待できるのではないかと考えられます。


敗血症などの重症感染症における凝固活性化や、DIC病態におけるサイトカインや血管内皮の関与、凝固と炎症のクロストークの存在が注目されるようになるとともに、抗炎症と抗凝固の両作用を有する治療薬が求められています。

活性化プロテインCは、そういう背景の中で脚光を浴びています。

なお、炎症と凝固のクロストークの現象は敗血症では存在しますが、非感染症性疾患においての存在は疑問ではないかと思っています(凝固活性化→炎症は、もし存在しても限定的と考えられます)。

Ontachi Y, Asakura H, Nakao S, et al. No interplay between the pathways mediating coagulation and inflammation in tissue factor-induced disseminated intravascular coagulation in rats. Crit Care Med. 2006; 34: 2646-2650.

 

(続く)敗血症と凝固・DIC(4)プロテインCと凝固・線溶

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13| DIC