敗血症と凝固・DIC(4)プロテインCと凝固・線溶
敗血症と凝固・DIC(3)炎症と凝固のクロストーク より続く
敗血症と凝固・DIC(4)プロテインCと凝固・線溶
血液は血管内を循環している場合には凝固することはありませんが、この点で血管内皮の果たす役割は極めて大きいことが知られています。
具体的には、血管内皮上には既述のトロンボモジュリン(TM)が存在するのみならず、ヘパリン様物質(ヘパラン硫酸プロテオグリカン:抗凝固性蛋白であるアンチトロンビンや組織因子経路インヒビターが結合)が存在し、プロスタサイクリン(PGI2:血小板機能抑制作用、血管拡張作用)、一酸化窒素(nitric oxide、NO:血小板機能抑制作用、血管拡張作用)、組織プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator、t-PA:プラスミノゲンをプラスミンに転換する線溶関連因子) が産生されます。
この中でも、プロテインC(PC)-TMシステムの意義は大きいです。
プロテインCは、主として肝臓で産生されるビタミンK依存性凝固阻止因子(セリンプロテアーゼ)です。
血管内でトロンビンが産生されて、血管内皮上に存在する抗凝固性物質であるトロンボモジュリン(TM)と結合しますと、トロンビン- TM複合体が形成されます。
この複合体は、プロテインCを活性化して活性化プロテインC(APC)に転換します。APCは、活性型第V因子と、活性型第VIII因子を不活化することで、抗凝固活性を発揮します。
トロンビンは、その本来の性格は向凝固性ですが、TMと複合体を形成することによりAPCの産生に寄与するという観点から、抗凝固性の性格に転換することになります。
APCは、線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)を不活化するために、抗凝固のみでなく向線溶の性格も合わせ持っています。
前述の如く敗血症においては、炎症性サイトカインの作用によって血管内皮上のTMの発現が低下しているため、APCの産生が低下していることになります。
また、敗血症では肝不全の合併に伴って基質であるPCの産生自体も低下しているため、このこともAPC産生に対してマイナスに作用します。
(続く)敗血症と凝固・DIC(5)活性化プロテインC(APC)治療 へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30| DIC