敗血症と凝固・DIC(5)活性化プロテインC(APC)治療
敗血症と凝固・DIC(5)敗血症に対する活性化プロテインC(APC)治療の意義
敗血症においては、PCの産生自体が低下しており、加えてAPC産生が低下しているため、このことも凝固活性化に拍車をかけてDIC発症へとつながることになります。
DICの合併は、敗血症の予後を著しく悪化させることが知られており、凝固活性化の制御は敗血症の予後を改善する観点から重要です。凝固活性化は炎症を増幅して、凝固と炎症のクロストークによる悪循環サイクルが形成されます。
この病態に対して、APCは抗凝固活性を発揮するのみならず、抗炎症作用を発揮することも期待されています。
Weiler H. Regulation of inflammation by the protein C system. Crit Care Med. 2010; 38(2 Suppl): S18-25.
Sarangi PP, Lee HW, Kim M. Activated protein C action in inflammation. Br J Haematol. 2010; 148:817-33.
Toltl LJ, Beaudin S, Liaw PC. Activated protein C up-regulates IL-10 and inhibits tissue factor in blood monocytes. J Immunol. 2008; 181:2165-73.
また、APCには、一酸化窒素(nitric oxide: NO)による血管障害、リンパ球や血管内皮細胞のアポトーシス、好中球活性化を抑制する作用も報告されています。
遺伝子組換え技術により抗凝固活性を10%未満に低下させたAPCにおいても、抗凝固活性を有した通常のAPCと同様に動物敗血症モデルの予後を改善したという報告があり、このことはAPCによる効果は抗凝固活性に依存しない部分が大きいことを示しています。
Kerschen EJ, Fernandez JA, Cooley BC, et al. Endotoxemia and sepsis mortality reduction by non-anticoagulant activated protein C. J Exp Med. 2007; 204: 2439-48.
この論文では、APCによる血管内皮PC受容体(endothelial cell protein C receptor, EPCR)とPAR-1を介したシグナルがAPCの抗炎症効果に重要な働きを演じていると論じています(この点は本シリーズの後の記事でも書かせていただきます)。
抗凝固活性を有さないAPCが敗血症に対して有効であるとしますと、出血の副作用を懸念する必要がなく安全な臨床応用が期待されますが、一方で、APCの敗血症に対する効果は、抗凝固活性に依存するという報告もあり、単純ではありません。
van Veen SQ, Levi M, van Vliet AK, et al. Peritoneal lavage with activated protein C alters compartmentalized coagulation and fibrinolysis and improves survival in polymicrobial peritonitis. Crit Care Med. 2006; 34: 2799-805.
Choi G, Hofstra JJ, Roelofs JJ, et al. Recombinant human activated protein C inhibits local and systemic activation of coagulation without influencing inflammation during Pseudomonas aeruginosa pneumonia in rats. Crit Care Med. 2007 May; 35: 1362-8.
(続く)敗血症と凝固・DIC(6)活性化プロテインC(APC)臨床試験 へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50| DIC