金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年01月07日

第VIII因子濃縮製剤とインヒビター:遺伝子組換え or 血漿由来?

血液凝固因子製剤は、遺伝子組換え製剤が主流になりつつあります。

しかし、純度の高い遺伝子組換え製剤よりも、血漿由来製剤の方がインヒビターの発症率が低いのではないか、あるいは免疫寛容療法の成功率が高いのではないかという考え方もありました。

今回紹介させていただく論文は、この点を論じています。



「血友病Aに対するVWF含有の第VIII因子濃縮製剤とインヒビター

著者名:Franchini M, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 104 : 931-940, 2010.


<論文の要旨>

 血友病Aにおいて第VIII因子活性を抑制するインヒビター(第VIII因子インヒビター)の出現は、血友病A治療における最も重大な合併症です。

 第VIII因子インヒビターを発症すると、標準的な治療に反応しなくなり出血症状が悪化します。

 この場合の短期的な目標は出血症状を止めることであり、長期的な目標は特に高力価症例においては免疫寛容療法によりインヒビターを永続的に消失させることです(参考:止血治療&免疫抑制治療;先天性ではなく後天性血友病の場合)。                      


in vitroの検討や一部の臨床試験の結果より、von Willebrand因子(VWF)を含有した第VIII因子濃縮製剤は、高純度の遺伝子組換え製剤よりもインヒビターを出現させにくいのではないかという考え方があります。

 また、免疫寛容療法の成功率は血漿由来製剤の方が高いのではないかと言う考え方があります。

著者らは、この点を明らかにするために、現在入手可能な臨床試験の結果を解析しました。

 その結果、血友病Aに対する凝固因子製剤の製造法の差違により、インヒビターの発症率や、免疫寛容療法の成功率に差はないことが判明しました。

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 出血性疾患