血友病性関節症の病態生理
血友病症例の治療目標の一つとして、血友病性関節症に進行させないことがあげられます。
昔は血液凝固因子製剤(血友病Aの場合は、第VIII因子製剤)は出血時に輸注するのが一般的な治療法でしたが、近年、特に重症例では出血時ではなく定期的に予防輸注する方法が行われるようになりました。これも、血友病性関節症に進行させないことが、その大きな目的です。
今回紹介させていただく論文は、血友病性関節症の病態生理に関する論文です。
「血液に起因する関節疾患(血友病性関節症の病態生理)」
著者名:Valentino LA, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 1895-1902, 2010.
<論文の要旨>
血友病症例において、関節内出血を繰返した場合に高頻度にみられる重症の合併症として、関節症をあげることができるます。
その結果、痛み、変形、可動域制限などをきたすことになります。
血友病性関節症の病態は完全には解明されていませんが、関節リウマチにおける関節炎や炎症過程でみられる変形性関節障害と類似していると考えられています。
本総説論文では、各種血液成分が関節の各部に与える影響についてまとめています。興味のあるかたは、直接論文を読まれることをお薦めしたいと思います。
血友病性関節症の原因となる血液成分
・血液成分
1.酵素:MCP-1,-3,-13、トロンビン、トリプターゼ、エラスターゼ、カテプシンなど。
2.サイトカイン&ケモカイン:IL-1、IL-6、TNF-α、MCP-1。
3.成長因子:VEGF、PDGF
・細胞成分
1. 赤血球:ヘモグロビン、鉄
2. 白血球
3. 単球/マクロファージ:TIMP-1
4. CD3陽性T細胞、血小板:成長因子
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23| 出血性疾患