金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年01月14日

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)の安全性と血栓症


遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)(商品名:ノボセブン)は、血友病インヒビターや後天性血友病が保険適応です(参考:止血剤の種類)。

ただし、その他の出血性疾患に対しても極めて有効であるため、全世界的に保険適応外使用が行われているのが実情です。

今回紹介させていただくN Engl J Med  の論文は、rFVIIaの安全性について論じています。

 


「遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)の臨床試験における安全性

著者名:Levi M, et al.
雑誌名:N Engl J Med  363 : 1791-1800, 2010.


<論文の要旨>

致命的出血に対する遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)の適応外使用は、血栓症の懸念が指摘されています。しかし、このことを検証したプラセボを対照とした試験はありません。

著者らは、無作為でプラセボ対照としたrFVIIaの保険適用外使用を検討した全試験(論文)において、血栓症の発症頻度を評価しました。全部で35試験(患者での26試験と健常人での9試験)が評価対象となりました。


全4,468例中(患者4,119例、健常人349例)、498例(11.1%)で血栓塞栓症がみられました。

全4,468症例において、動脈血栓症の発症はrFVIIaの群において有意に高頻度でした(rFVIIa:プラセボ=5.5%:3.2%、P=0.003)

一方、静脈血栓症には有意差はみられませんでした(同じく、5.5%:5.7%)。


rFVIIaの投与を受けた群では、急性冠症候群が2.9%にみられたのに対し、プラセボ群では1.1%でした(P=0.002)。

また、動脈血栓塞栓症の発症はrFVIIa投与群で多かったですが、特に65才以上で明らかでした(同じく、9.0%:3.8%、P=0.003)。75才以上では更に高くなりました(同じく、10.0%:4.1%、P=0.02)。


以上、rFVIIaの適用外使用は、動脈血栓症の発症を増加させる(静脈血栓症は増加させない)ものと考えられました。特に高齢者は注意が必要と考えられました。

 


【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:49| 出血性疾患