後天性血友病Aの自己抗体とFIXの活性化
後天性血友病Aでは、第VIII因子に対する自己抗体が出現して出血傾向をきたします。
今回紹介させていただく論文は、後天性血友病Aにおいて、第VIII因子ではなく、第IX因子に対する抗体が出現して、その抗体が第IX因子を活性化させるというミステリアスな論文です。
Bloodに報告されました。
「後天性血友病Aにおける自己抗体がFIXを活性化する」
著者名:Wootla B, et al.
雑誌名:Blood 117: 2257-2264, 2011.
<論文の要旨>
後天性血友病は、第VIII因子(FVIII)に対する自己抗体が出現するまれな出血性素因です(参考:ノボセブン、第VIII因子インヒビター、血友病)。
一部の後天性血友病疾患から取り出したIgGは、FVIIIを加水分解することは知られていました。
このような抗体を含めて後天性血友病の生死と関連した臨床パラメーターは知られていません。
著者らは、後天性血友病症例において抗FIX抗体が存在することを示しています。
さらに、一部の後天性血友病患者からのIgGは、FIXを加水分解しました。
ほとんどの症例で、IgGによるFIX加水分解は、FIXの活性化をもたらしました。
また、IgGによるFIX加水分解は、25/65例において活性型FIXを産生しました。
このIgGは、24時間でFIX0.3nMを活性化しました(トロンビン形成を回復させるに足る量でした)。
この蛋白分解作用を有するIgGは、病的止血状態下においてFIXを活性化できるものと考えられました。
後天性血友病AにおいてみられるIgGによるFIXの活性化は、生体防禦反応的側面を有しています。
今後の臨床応用が期待できる新知見ではないかと思われます。
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08| 出血性疾患