血友病の凝固因子製剤予防投与と頭蓋内出血(脳出血)
血友病の出血症状としては、関節内出血が最も高頻度に見られます。次いで、筋肉内出血ではないかと思います。
頭蓋内出血(脳出血)は極めてまれですが、一旦発症しますと問題ですので、その予防は重要です。
今回紹介させていただく論文は、血友病患者における凝固因子製剤予防投与と頭蓋内出血の関連について論じています。
「血友病患者における凝固因子製剤予防投与と頭蓋内出血の関連(USA)」
著者名:Witmer C, et al.
雑誌名:Br J Haematol 152: 211-216, 2011.
<論文の要旨>
血友病患者において、頭蓋内出血(ICH)は最も重症の出血です。
著者らは、血友病患者におけるICHの危険因子を究明し、予防投与がICH発症を抑制するかどうか検討しました。
2歳以上の血友病10,262例のうち、199例(1.9%)においてICHの発症がみられました(発症率390/105人・年)。
88/199例(44%)において頭部外傷に起因するものと報告されていました。
ICHによる死亡は、39/199例(19.6%)でした。
有意なICH危険因子は、高力価インヒビター(OR4.01)、ICHの既往(OR3.62)、重症血友病(OR3.25)でした。
予防投与は、HIV陰性でインヒビターの出現していない重症血友病におけるICH発症を有意に抑制しました。
ICHの最も強い危険因子は、インヒビター保有、ICHの既往、重症血友病、頭部外傷でした。
以上、血友病に対する凝固因子製剤の予防投与は、合併症のない重症血友病におけるICHの発症を抑制するものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05| 出血性疾患