金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2011年05月13日

造血幹細胞移植の夢と現実(3)DLIが効くメカニズム


造血幹細胞移植の夢と現実(2)ドナーリンパ球輸注(DLI)
より続く

(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。

 


造血幹細胞移植の夢と現実(3)

DLIが効くメカニズム

我々臨床家の使命は、臨床の現場で体験した奇跡のメカニズムを解明し、それを他の患者さんの治療に役立てることにあります。

治せる白血病がたとえ特定の種類に限られていたとしても、リンパ球が白血病を攻撃するメカニズムを明らかにできれば、それをその他の白血病治療に応用できる可能性があります。

面白いことに、DLIを行ってから白血病細胞が減少し始めるまでにはリンパ球を輸注してから1−2カ月以上かかります。

このタイムラグは、白血病細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞がDLI後に十分に増殖するまでの期間を示しているように思われました。

そこでDLIを受けた慢性骨髄性白血病患者さんの検体を全国から送ってもらい、DLI後の血液や骨髄中のTリンパ球を近藤恭夫君が詳細に検討したところ、白血病の傷害に関わっている特定のT細胞が、白血病細胞が減少する直前に急速に増加することが分かりました。

また、このような白血病を殺すT細胞は、DLIによって持ち込まれたものではなく、元々患者さんの末梢血に存在してものであることが、その後の小谷岳春君の研究によって明らかになりました。

すなわち、患者さんの身体の中には白血病細胞を特異的に傷害するT細胞が元々存在しているが、様々な免疫寛容のメカニズムによって、そのままではがんを攻撃できません。

ところが、ドナーリンパ球が大量に体内に輸注されると、何らかの機序によって白血病に対する免疫寛容の破綻が誘導され、その結果白血病細胞が攻撃されるようになったと考えられます。

随分昔ですが、化学療法後の急性白血病患者さんでは、治療過程で受けた輸血量の多い例の方が、輸血量の少ない例よりも再発率が低いという報告がありました。

昔は輸血製剤から白血球が十分除去されていなかったため、輸血によって持ち込まれた白血球によって患者さん自身のTリンパ球が刺激され、抗白血病免疫が誘導されていたのではないかと思われます。

 

2000年頃から、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を大量にドナーに投与することによって採取した末梢血中の幹細胞を輸注するという末梢血幹細胞移植が、骨髄移植に代わって盛んに行われるようになりました。

当時G-CSFはリンパ球系には作用しないと考えられていたのですが、大量に投与されるとin vivoでTリンパ球が活性化されることが杉森尚美君の研究によって明らかになりました。

末梢血幹細胞移植では骨髄移植に比べて白血病の再発率が低いことが知られています。

これは単にGVHDの頻度が高いだけでなく、活性化されたリンパ球が患者に輸注されることによって、患者の体内に残った白血病に対する細胞傷害性T細胞が誘導されやすくなるためとも考えられます。

 

(続く)

造血幹細胞移植の夢と現実(4)固形腫瘍(癌)

 

【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連

造血幹細胞移植入門(インデックス)

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 血液内科