造血幹細胞移植の夢と現実(6)移植後再発白血病と再移植
(金沢大学第三内科同門会報の教授コーナーby 中尾眞二教授より)。
造血幹細胞移植の夢と現実(6)
移植後再発白血病に対する再移植
慢性骨髄性白血病以外の移植後白血病再発に対する唯一の根治療法が、再度の造血幹細胞移植です。
ただし再移植によって白血病を治そうとすると、最初の移植時以上に前処置を強めて白血病細胞を叩かなければなりません。
しかし、一度移植を受けた患者さんは移植前処置やGVHDなどによって既に臓器障害を起こしているため、強い前処置には耐えられません。
かといって前処置を弱くするとすぐに再発してしまうというジレンマがあります。
前処置をできるだけ弱くして、初回とは異なる移植片を用いて移植すれば、初回移植にはなかった移植片対白血病(graft-versus-leukemia、GVL)効果のため、治癒が得られる可能性があります。
2005年のアメリカ血液学会の抄録に、状態の悪い白血病患者に対して一日だけの極端に弱い前処置を用いてHLAの半合致移植を行ったところ、一部の例で長期生存が得られたという報告でありました。
学会には採択されなかったこの抄録の前処置を参考にして、さらに弱い移植前処置で再発白血病患者さんに対して臍帯血移植を行ったところ、無事生着と長期生存が得られました。
このone-day regimenと臍帯血を用いた再発白血病に対する再移植は、山下剛史君、杉盛千春君らが報告して以来、国内の多くの施設で利用され、その有用性と、臍帯血移植の持つ強いGVL効果が確認されています。
実際のところ、金沢大学で再移植を行った移植後再発白血病患者さんのうち、長期生存しているのは全例が臍帯血ミニ移植を受けた例です。
臍帯血は骨髄とは異なり、臨機応変に移植に用いることができます。
このため、従来は予後絶対不良と考えられていた移植後の再発白血病に対しても、化学療法によって白血病細胞を一時的にでも十分に減らすことができれば、ピンポイントで臍帯血移植を行うことにより救命できる可能性があります。
(続く)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11| 血液内科