国際血栓止血学会(ISTH):SSCシンポジウム(DIC)外傷/ICU
国際血栓止血学会(ISTH)/学術標準化委員会(SSC)/DIC部会の報告を続けさせていただきます。
国際血栓止血学会(ISTH):SSCシンポジウム(DIC)敗血症 より続く。
凝固と炎症のクロストーク(ヒストン・トロンボモジュリン・プロテインC)ーインデックスー
Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)
2011年7月24日(日)9:00-12:00
SSC Session(1)
DIC due to sepsis or trauma
Wadaは、chairperson報告を行いました。
DIC研究におけるテーマとして、外傷性DIC、Dダイマー標準化の問題、non-Overt DIC診断基準、治療ガイドラインなどを挙げました。
出血を伴っている外傷性DICに対しては、トラネキサム酸が死亡率を低下させるという報告も紹介された(Lancet 376 (9734): 23-32, 2010)。
ただし、外傷早期に投与することが重要であり、遅れての投与はかえって有害であることにも注意が必要です(Lancet 377(9771): 1096-101, 2011)。
また、modified non-overt DIC診断基準に関しても論じられました(Am J Hematol 85: 691-694, 2010、Thromb Res 126: 18-23, 2010)。
Mimics of DIC in the intensive care unit
Thachilは、集中治療室(ICU)における凝固異常は、DICと類似した病態が少なくないことを報告しました。
ICUでは血小板数の低下はしばしば見られます。
PTの延長がみられることもありますが、DICのためとは限りません。
フィブリノゲンは低下するよりもむしろ上昇することが多く、フィブリン関連物質(FDPなど)は上昇することが多いがその原因は多様です。
ICU患者で経験する血小板数低下にも多くの原因があり、敗血症、薬物、ヘパリン(HIT)、血液希釈、CABG術後、ITP、TTP、そしてDICが挙げられます。
ICU患者の14〜28%でPT(APTT)の延長がみられますが、これもDICのみでなくビタミンK欠乏症、肝不全、ヘパリン投与中など原因は多様です。なお、時にAPTTの短縮がみられますが、過剰で調整されていないトロンビン形成を反映しているものと考えられます。
フィブリン関連マーカー(FDP、Dダイマー、SFMCなど)も、ICU患者の多くで観察されますが、DICとは限らず、静脈血栓塞栓証、術後、炎症、大量の胸水&腹水、大血腫、炎症など原因は多様です。
さらには、アッセイの問題がある場合もあります。
肝疾患においては、凝固因子&血小板数の低下のみならず、凝固阻止因子(アンチトロンビン、プロテインCなど)の低下もみられるために、出血症状、血栓症のどちらへも傾きうる不安定な状態になります。
その他、ICUで経験するDICと鑑別すべき疾患としては、血栓性微小血管障害症(TTP、HUS、HELLP)、macrophage activation syndrome(MAS)、全身性血管炎(臓器障害を伴う)、大量出血(消費および血液の希釈を生じる)などがあります。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| DIC