国際血栓止血学会(ISTH):SSCシンポジウム(DIC)外傷/線溶
国際血栓止血学会(ISTH)/学術標準化委員会(SSC)/DIC部会の報告を続けさせていただきます。
国際血栓止血学会(ISTH):SSCシンポジウム(DIC)外傷/ICU より続く。
凝固と炎症のクロストーク(ヒストン・トロンボモジュリン・プロテインC)ーインデックスー
Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)
2011年7月24日(日)9:00-12:00
SSC Session(2)
DIC due to trauma
Gandoは、DICと臓器障害の関係について論じられてきた歴史を、鶏が先か卵が先かの議論と重ねて報告を開始しました。
重症の外傷に伴う凝固異常症では、出血のコントロールが予後とも直結して問題となります。
ただし、外傷に伴う凝固異常症の原因は十分に明らかになっていません。
まず、外傷早期の凝固異常症ではショック、外傷に起因するトロンビン形成が考えられます。この凝固活性化は、抗凝固と線溶活性化を伴っています。
この外傷性ショックによる急性の凝固異常症は、acidemia、低体温、希釈などや治療介入により修飾を受けることになります。これらのAcute Coagulopathy of Trauma-Shockは、DICの概念とは分けるべきであるという考え方もあります(Hess JR, et al. J Trauma 65: 748-54, 2008)。
これに対してGandoは、外傷に起因する凝固異常はDICであるが、病期によって2つのタイプのDICに分類されると報告しました。
1)DIC with the fibrinolytic phenotype:外傷初期の凝固異常であり、凝固活性化および線溶活性化が著しい病態です。炎症性サイトカインが上昇し、外傷由来の組織因子が凝固を活性化して大量のトロンビンが形成されます。ショック性の低酸素血症や微小血栓の多発によりfibrin(ogen)olysisが進行します。消費性凝固障害や出血が前面にでやすいのが特徴です。
2)DIC with the thrombotic phenotype:外傷後24〜48時間でみられます。血小板や血管内皮由来のPAIにより線溶の抑制された病態となり、血栓症が問題となります。いずれであってもDICと診断できる病態であると発表しました。
fibrinolytic phenotypeの病期では、外傷に対する観血的治療、ショック対策、濃厚血小板や新鮮凍結血漿による補充療法が有効です。また、この時期に限って、トラネキサム酸による抗線溶療法は出血に対して有効であると報告しました(Gando S, et al: Ann Surg 251: 10-19, 2011)。
<なお、外傷におけるDIC with the fibrinolytic phenotypeは、急性前骨髄球性白血病(APL)における線溶亢進型DICに、DIC with the thrombotic phenotypeは敗血症に合併した線溶抑制型DICに近い概念と考えられます>
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36| DIC