金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年08月08日

国際血栓止血学会(ISTH):SSC(DIC)アンチトロンビン/AT

国際血栓止血学会(ISTH)/学術標準化委員会(SSC)/DIC部会の報告を続けさせていただきます。

国際血栓止血学会(ISTH):SSCシンポジウム(DIC)外傷/線溶 より続く。

ISTH/DIC部会(SSCシンポジウム)ーインデックスー

凝固と炎症のクロストーク(ヒストン・トロンボモジュリン・プロテインC)ーインデックスー

 

Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)

2011年7月24日(日)9:00-12:00

SSC Session(3)


Antithrombin (AT)

Ibaは、DIC治療ガイドラインにおいて、日本ではAT濃縮製剤(AT)が推奨されているのに対して、欧州では推奨されていない点にフォーカスをあてました。 

多施設前向き試験でATの効果および副作用を評価しました。

対象は、敗血症に合併したDIC1,435例(154施設:2007〜2010年)で、このうち729例が解析可能でした。

内訳は、650例はAT 1,500単位3日間、79例はAT 3,000単位3日間の投与が行われました。

Day7におけるDIC離脱率、Day28における死亡率における評価が行われました。


治療前のAT活性が50%未満であった症例は、AT 3,000単位の投与群では69.6%であったのに対して、AT 1,500単位の投与群では48.2%でした(AT 3,000単位の投与群がより重症でした)。


DIC離脱率はAT3,000単位投与群では69.6%、1,500単位投与群では55.4%
であり、生存率はAT3,000単位投与群では74.7%、1,500単位投与群では65.2%でした。

生存率を上昇させる因子は、以下でした。

1)AT 3,000単位と高用量投与であること

2)若年であること

3)治療前AT活性が高値であること


出血の副作用は
6.52%(重症出血1.71%)でみられましたが、AT 1,500単位投与群と3,000単位投与群間で有意差はみられませんでした。


以上、特に治療前AT活性が低値である症例においては、AT 3,000単位の投与が良い効果を発揮すると考えられました。

ただし、日本における全ての施設においてAT3,000単位の投与が認められていない現状を考えますと、AT1,500単位に遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)を併用する治療がより良い結果をもたらすのではないかと考察されました。

なお、ヘパリンの併用の有無は、効果、出血の有害事象のいずれにも影響を与えませんでした。

この検討は、post-market surveillanceでありプラセボ投与群を設置していないという制限はあるものの、多数例での多施設前向き試験の結果であり、AT 高用量投与の意義を明らかにした点は、重要であると考えられます。



【リンク】

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54| DIC