国際血栓止血学会(ISTH):SSC(DIC)造血幹細胞移植/VOD
国際血栓止血学会(ISTH)/学術標準化委員会(SSC)/DIC部会の報告を続けさせていただきます。
国際血栓止血学会(ISTH):SSC(DIC)アンチトロンビン/AT より続く。
凝固と炎症のクロストーク(ヒストン・トロンボモジュリン・プロテインC)ーインデックスー
Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)
2011年7月24日(日)9:00-12:00
SSC Session(4)
Therapeutic effects of recombinant thrombomodulin in DIC patient with hematological malignancy
Nomuraは、造血幹細胞移植(HSCT)後の合併症のキーワードとして“SIGHT”を提唱しました。
すなわち、SOS(別称:VOD)、Infection、GVHD、HPS(hemophagocytic syndrome)、TMAです。この中でも、特にVODとTMAは、止血、凝固異常と密接に関連しています。
化学療法に伴う肝類洞血管内皮細胞と肝細胞障害は、VOD病態の基礎になっていると考えられます。
VOD患者では、血管内皮障害マーカーや接着因子関連マーカーが上昇している(TM、E-セレクチン、組織因子、TFPI、PAI)ため、血管内皮障害マーカーがVODを予知する可能性があります(Cutler C, et al: Biol Blood Marrow Transplant 16: 1180-1185, 2010 )。
VODに対してヘパリンによる抗凝固療法が行われることがありますが、ヘパリンの投与を行ってもVODに対して無効です。
Nomuraらの検討によりますと、HSCT後に上昇したIL-6、TNF、HMGB-1に対してヘパリンの投与は影響を及ぼしませんでしたが、rTMの投与を行ったところ、これらのマーカーの上昇を有意に抑制しました。
VCAM-1、E-セレクチンの上昇に対しては、rTMは影響を与えませんでしたが、ヘパリンの投与ではさらにこれらのマーカーを上昇させました。
rTMは、抗凝固(トロンビン補足、活性化プロテインC)、抗炎症(TMのlectin domeinの作用)の作用を合わせ持っています。
VOD発症の一因としてHMGB-1を含む炎症性サイトカインの関与があると考えられますので、rTMはVOD発症を抑制する上で有効と考えられると発表しました(Nomura S, et al: Thromb Haemost 105: 1118-1120, 2011)。
なお、AT活性が50%未満に低下した症例に対しては、まずAT濃縮製剤を補充した上で、rTMを投与するのが良いのではないかと発表しました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57| DIC