金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2011年08月09日

国際血栓止血学会(ISTH):SSC(DIC)造血幹細胞移植/VOD

国際血栓止血学会(ISTH)/学術標準化委員会(SSC)/DIC部会の報告を続けさせていただきます。

国際血栓止血学会(ISTH):SSC(DIC)アンチトロンビン/AT より続く。

ISTH/DIC部会(SSCシンポジウム)ーインデックスー

凝固と炎症のクロストーク(ヒストン・トロンボモジュリン・プロテインC)ーインデックスー

 

Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)

2011年7月24日(日)9:00-12:00

SSC Session(4)


Therapeutic effects of recombinant thrombomodulin in DIC patient with hematological malignancy


Nomuraは、造血幹細胞移植(HSCT)後の合併症のキーワードとして“SIGHT”を提唱しました。

すなわち、SOS(別称:VOD)、Infection、GVHD、HPS(hemophagocytic syndrome)、TMAです。この中でも、特にVODとTMAは、止血、凝固異常と密接に関連しています。


化学療法に伴う肝類洞血管内皮細胞と肝細胞障害は、VOD病態の基礎になっていると考えられます。

VOD患者では、血管内皮障害マーカーや接着因子関連マーカーが上昇している(TM、E-セレクチン、組織因子、TFPI、PAI)ため、血管内皮障害マーカーがVODを予知する可能性があります(Cutler C, et al: Biol Blood Marrow Transplant 16: 1180-1185, 2010 )。

VODに対してヘパリンによる抗凝固療法が行われることがありますが、ヘパリンの投与を行ってもVODに対して無効です。


Nomuraらの検討によりますと、HSCT後に上昇したIL-6、TNF、HMGB-1に対してヘパリンの投与は影響を及ぼしませんでしたが、rTMの投与を行ったところ、これらのマーカーの上昇を有意に抑制しました。

VCAM-1、E-セレクチンの上昇に対しては、rTMは影響を与えませんでしたが、ヘパリンの投与ではさらにこれらのマーカーを上昇させました。


rTMは、抗凝固(トロンビン補足、活性化プロテインC)、抗炎症(TMのlectin domeinの作用)の作用を合わせ持っています。

VOD発症の一因としてHMGB-1を含む炎症性サイトカインの関与があると考えられますので、rTMはVOD発症を抑制する上で有効と考えられると発表しました(Nomura S, et al: Thromb Haemost 105: 1118-1120, 2011)。

なお、AT活性が50%未満に低下した症例に対しては、まずAT濃縮製剤を補充した上で、rTMを投与するのが良いのではないかと発表しました。





【リンク】

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57| DIC