金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年08月18日

プラザキサ vs ワーファリン 3:ダビガトランとAPTT

プラザキサ vs ワーファリン(心房細動)2:モニタリング/INRより続く。

関連記事:新規経口抗凝固薬(1):次世代のワーファリン

 
プラザキサとAPTT

心房細動に起因する心原性脳塞栓の発症予防目的としては、長らく治療薬はワルファリン(商品名:ワーファリン)のみでしたが、本年3月から、ワーファリンのみでなくプラザキサ(ダビガトラン:抗トロンビン薬(6))を処方することができるようになったのは朗報です。

プラザキサ、ワーファリンの長所と短所は先の記事でも書かせていただきました。

プラザキサ vs ワーファリン(心房細動)1:PT-INR&APTT

プラザキサ vs ワーファリン(心房細動)2:モニタリング/INR



ワーファリンコントロール時には、診察時ごとに採血を行い、PT-INR(関連記事:PT-INRAPTT)をチェックするのが一般的だと思います。

ワーファリンはビタミンKの拮抗薬のため、内服に伴い、ビタミン依存性凝固因子(半減期の短い順に、VII、IX、X、II)の活性が低下します。特に、半減期の短い第VII因子は敏感に反応します。

ワーファリンコントロールのモニタリングを、APTTではなくPTで行うのは、PTは半減期の短い第VII因子を反映するためなのです(APTTは、PTと対照的にビタミン依存性凝固因子の中では、VII因子のみ反映しません)。


さて、プラザキサですが、ワーファリンとは異なり毎回の採血、モニタリングが必要ないことをキャッチフレーズにしています。しかし、この点につきましては、専門家の間でも意見が分かれるのではないかと思っています。

上図のようにプラザキサ(薬品名:ダビガトラン<経口抗トロンビン薬>)を投与しますと、PT-INRは上昇し(PTは延長し)、APTTは延長します。特に、APTTの延長の方が目立つようです。

臨床用量では、プラザキサ(ダビガトラン)の血中濃度は、150〜170ng/mlくらいまで到達するようですので、APTTは、1.5〜1.8倍位まで延長するようです。

APTT 1.5〜1.8倍位の延長というのは、代表的な出血性疾患である血友病に匹敵するような延長です。モニタリング不要と言われてもすぐに受け入れにくい人も多いのではないでしょうか。

管理人らは、プラザキサのモニタリングにはAPTTは不可欠と考えています。


加えて、PT(PT-INR)によるモニタリングも欠かせないと思っています。

その理由ですが、ワーファリンからプラザキサに治療変更時の本来はあってはいけない問題点です。

ワーファリンを内服されてきた患者さん(脳梗塞の既往のある御高齢の患者さんを含む)は、年余にわたって主治医からワーファリン内服の重要性を教育されてきました。

プラザキサに変更する場合は、当然ワーファリンは中止する必要があります。
しかし、患者さんと主治医の思いがかみ合わず、間違ってワーファリンが中止されずに、ワーファリンとプラザキサが併用されてしまう可能性です。
このようなことは絶対あってはいけないのですが、可能性は0%ではないと思います。
PT-INRをチェックしていれば、すぐにおかしいと気がつくことができます。

プラザキサの副作用を出させない、本来あってはいけないことにすぐ気がつくためにも、PT、APTTの両者によるモニタリングは重要なのではないでしょうか。

ただし、プラザキサのTmax 約2時間(半減期 約12時間)という薬物動態から、内服後どの時点で採血するかによって話は変わってきます。しかし、このことはモニタリングできないことの理由にはならないと思っています。内服から採血までの時間間隔を配慮すれば良いだけのことではないかと思っています。


(続く)

プラザキサ vs ワーファリン 4:リバロキサバンとAPTT

 
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【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08| 抗凝固療法