後天性第XIII因子欠損症(第XIII因子インヒビター)
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、後天性第XIII因子欠損症(第XIII因子インヒビター)に関する論文の紹介です。
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「出血性後天性第XIII因子欠損症(後天性血友病13)」
著者名:Ichinose A.
雑誌名:Semin Thromb Hemost 37: 382-388, 2011.
<論文の要旨>
血液凝固第XIII因子(FXIII)は、サブユニットAとサブユニットBからなる四量体として血中を循環しています。
FXIIIはトロンビンによって活性化され、フィブリンモノマーを架橋結合します。
先天性第XIII因子欠損症では、生涯にわたる出血傾向、創傷治癒遅延、習慣性流産、出産時の臍帯出血などがみらます。
一方、DIC、大手術、肝疾患、その他の疾患に起因する第XIIIの消費および産生低下はより高頻度にみられますが、出血症状をきたすことはほとんどありません。
日本では、最近FXIIIに対する抗体が出現して出血性FXIII欠損症(後天性血友病13)をきたす症例のコンサルトが増えています。
著者らは、厚労省研究班の活動を通して、FXIIIに対する抗体が出現した日本人21症例を確認しています。
この病態では凝固時間の延長はなく、血小板数の低下もないために、見逃されている症例も多いと考えられます。
臨床医は、出血症状を有する症例に遭遇した場合には、後天性血友病13の可能性も考えてFXIII活性の測定も行うべきと思われます。
後天性血友病13に対しては、通常FXIII濃縮製剤が有効です。
また、抗FXIII抗体を消失させるために免疫抑制療法を開始する必要があります。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 19:06| 出血性疾患