成人血友病患者における心血管疾患の危険因子
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、成人血友病患者における心血管疾患の危険因子に関する論文の紹介です。
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「成人血友病患者における心血管疾患の危険因子」
著者名:Lim MY, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 22: 402-406, 2011.
<論文の要旨>
長寿化に伴って、血友病患者における心血管疾患(CVD)危険因子が増加するものと考えられています。
しかし、エビデンスに基づいた治療ガイドラインはありません。
著者らは、血友病患者におけるCVD危険因子の頻度および治療法について調査しました。
Mayo血友病センターに通院する成人血友病(35歳以上)58症例(2006.1.〜2009.10.15)が調査対象となりました。
CVD危険因子を有する頻度は、高血圧65.5%、糖尿病10.3%、喫煙12.5%、肥満19.6%でした。31%の症例では脂質に関する血液検査が行われていませんでした。
危険因子に対する治療としては、降圧剤が84.2%、高脂血症治療薬が12.1%で処方されていました。
喫煙者7人のうち4人は禁煙カウンセリングを受けており、肥満の11人のうち4人が生活改善指導を受けていました。
8症例(13.8%)がCVDを経験していました(心筋梗塞<MI>3例、冠動脈疾患2例、MIと脳梗塞の合併1例、脳出血2例)。
この8例のうちアスピリン治療が行われていたのは5例でしたが、1例では内服後に血友病の診断がなされ中止されました。
1例ではステント治療後に2剤の抗血小板療法が行われていましたが、鼻出血がみられたためクロピドグレルが中止されました。
このように、血友病患者では、年齢の一致した一般男性と同程度にCVD危険因子を有していました。
血友病患者においても、CVD危険因子のスクリーニングを行い、食事療法や薬物治療を行うことは重要であり、開業医、循環器専門家、血友病センター専門医の協力関係が必須と考えられました。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19| 出血性疾患