2011年10月05日
インヒビター中和療法で手術の血友病B:活性型第VII因子製剤へ
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、インヒビター保有の血友病Bに対して、大手術が行われた症例の報告です。
第IX因子製剤による中和療法が行われていましたが、免疫応答反応により、第IX因子製剤が無効となったため、活性型第VII因子製剤(rFVIIa)に切り替えられています。
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「インヒビター中和療法を用いて、左股関節全置換術を施行したハイレスポンダー血友病B」
著者名:小川吉彦、他。
雑誌名:臨床血液 52: 713-717, 2011.
<論文の要旨>
インヒビターを保有する血友病Bの患者に対して、左股関節全置換術を施行した症例の報告です。
症例は26歳男性。ハイレスポンダーの抗体を保有する血友病B患者です。左股関節の血友病性関節症に対して左股関節全置換術を施行しました。
術前の抗体価は、長年にわたり第IX因子製剤を使用していなかったため、入院時には1BU/mlと低下していました。
そのため手術時には第IX因子製剤による中和療法を行い、術中•術後の維持療法にも第IX因子製剤を使用しました。
術後7日目よりAPTTの延長を認め、免疫応答反応(anamnestic response)により、第IX因子製剤が無効となったと判断し、活性型第VII因子製剤に切り替えました。
術後の止血コントロールは良好であり、抗体保有の血友病B患者であっても、安全に大手術を行うことができることが示唆されました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 出血性疾患