抗炎症作用:トロンボモジュリン製剤(5)
TMの線溶系への作用:トロンボモジュリン製剤(4)より続く。
APC/EPCR/PAR-1システムによる抗炎症・細胞保護作用
活性化プロテインC(APC)は血管内皮のendothelial PC receptor(EPCR)に結合しますと、プロテアーゼ活性化受容体(protease-activated receptor-1: PAR-1)を活性化し、抗炎症効果・細胞保護効果を示します。
PAR-1の活性化により、血管内皮細胞での接着分子(E-selectin、VCAM-1、ICAM-1)などの発現阻害、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、TNFαなど)の産生阻害、好中球の活性化阻害を示します。
Macias, WL. et al.: Crit. Care, 9 Suppl 4:S38-S45, 2005.
Toltl, LJ. et al.: J. Immunol., 181:2165-2173, 2008.
また、炎症による障害から壊死におちいった細胞はヒストンを遊離し血管内皮細胞を障害しますが、APCはヒストンを分解することで抗炎症作用を発揮するという報告もあります(参考:凝固と炎症(ヒストン・敗血症・トロンボモジュリン・プロテインC))。
Xu, J. et al.: Nat. Med., 15:1318-21, 2009.
さらに、APC/EPCR/PAR-1システムは細胞内におけるsphingosine kinase 1(SphK1)を活性化し、生成されたsphingosine-1-phosphate(S1P)の細胞外への遊離を介してSIP受容体1(S1P1)が活性化され、血管内皮細胞の抗アポトーシス、抗炎症作用を発揮し、細胞保護作用へとつながっていきます(参考:敗血症と凝固・DIC/抗炎症効果)。
Danese, S. et al.: Blood, 115:1121-1130, 2010.
TMによる直接的な抗炎症作用
high mobility group box-1 protein 1 (HMGB1)の循環血液中への放出は臓器障害を引き起こし、致死性因子として注目されています。
TMはレクチン様ドメインにこのHMGB1を吸着・中和させ、さらにEGF様ドメイン4-6に結合したトロンビンによって分解・失活します。
Abeyama, K. et al.: J. Clin. Invest., 105:1267-1274, 2005.
Ito, T. et al.: Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 28:1825-1830, 2008.
また、リポポリサッカライド(LPS)もこのレクチン様ドメインに吸着されるとの報告があり、TMは直接的に抗炎症作用を示します。
Shi, CS. et al.: Blood, 112:3361-3670, 2008.
参考:リコモジュリン
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58| DIC