金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年10月25日

溶血性副作用:輸血の副作用とその対策(3)

重篤副作用の診断:輸血の副作用とその対策(2)より続く。


はじめに

輸血副作用(表:副作用頻度)の多くは軽症にとどまりますが、重篤な副作用(表:重篤副作用の診断)への備えも必要です。

特に、ABO不適合輸血による急性溶血アナフィラキシーショックは通常輸血後10分以内に起こり、迅速かつ適切な治療が求められます。

輸血を実施する病棟や外来では、目立つ場所への緊急対応マニュアル掲示が望ましいです。

また、以下の輸血事故防止の基本事項も含め、平素のスタッフ教育も必要です。

・1患者1回毎の輸血準備・実施
・患者、血液製剤、製剤伝票、交差適合票間のダブルチェック
・輸血開始後5分間の患者観察、15分後・終了後の患者確認

本シリーズでは、代表的な輸血副作用と対応をまとめました。


急性溶血性副作用


輸血後24時間以内に起こる溶血反応を指しますが、大半はABO不適合輸血直後の血管内溶血です(表:重篤副作用の診断)。

死亡率は約20%ですが、ABO不適合輸血量50 mL以下なら回復が期待できます。

・Janatpour KA, Kalmin ND, Jensen HM, et al: Clinical outcomes of ABO-incompatible RBC transfusions. Am J Clin Pathol 129:276-81, 2008

・藤井靖彦(研究代表者): 輸血副作用対応ガイド. 日本輸血・細胞治療学会輸血療法委員会, 2011


ABO不適合輸血が疑われれば直ちに輸血を中止しますが、急速輸液に備え、静脈留置針は抜去しません(下表)。原則としてICU管理とします。

表:ABO不適合輸血への対応

1)輸血中止
・看護師は医師の指示を待たない
・輸血セットは交換するが静脈留置針は残す
・可能なら残存血を注射器で吸引除去
・乳酸または酢酸リンゲル液(すぐ用意できなければ生食も可)を急速静注(目安は1,500ml/時)

2)バイタルサイン監視

3)次に起こるショック状態や播種性血管内凝固症候群、急性腎不全に備える

4)ICU管理

5)輸血によってのみ救命しうる病態なら、適合血のみを慎重に輸血

6)輸血していた製剤は、血液型と輸血量再確認のため保存





遅発性溶血性副作用

輸血後24時間以降に起こる溶血反応を指します。

主に不規則抗体による血管外溶血で、輸血5-10日後に発熱や黄疸、溶血を来たします。

過去の輸血や妊娠で前感作を受けていることが多いです。

通常無治療で良いですが、腎障害や重症溶血に至ることもあります。

 

(続く)アレルギー/アナフィラキシー:輸血の副作用とその対策(4)

 

 【リンク】

 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 輸血学