新鮮凍結血漿製剤(FFP)インデックス
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(7)注意点より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(6)必要量より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(4)種類より続く。
(続く) 新鮮凍結血漿製剤(FFP)(6)必要量へ
<リンク>
国内の新鮮凍結血漿製剤(FFP)は全て保存前白血球除去(leukocyte reduced: LR)製剤(FFP-LR)です。
1単位あたりの白血球数は1×106個以下と少なく、しかも凍結によりほとんど破壊されます。
200 mL献血、400 mL献血由来の1単位製剤(FFP-LR-1:8,706円)、2単位製剤(FFP-LR-2:17,414円)、成分献血由来のFFP-LR-Ap(22,961円)があり、容量はそれぞれ120 mL、240 mL、450 mLです。
FFP-LR-Apは5単位製剤とみなされてきましたが、実際は4単位弱の容量しかありません。
これは2007年LR処理が導入されるまで、FFP 1単位製剤が80 mLであったことのなごりです。
FFP-LR-Apは主に血漿交換に用いられます(なお、血漿交換に1単位、2単位製剤を用いると割高になります)。
新鮮凍結血漿は、安全性担保のため採血後180日の貯留保管期間が設けられています。
有効期限は採血後180日から1年後までです。
その間−20°C以下で凍結保存されます。
FFPは、ビニール袋に入れたまま30〜37°Cの恒温槽やFFP融解装置で融解します。
直接熱湯をかけたり、電子レンジを使用されないよう注意します(「解凍して」の指示のとらえかたは様々です)。
凝固因子の失活を防ぐため、FFPは融解後3時間以内に輸注し終えます。
FFPの再凍結は行いません。
新鮮凍結血漿は献血者の厚意に基づく貴重な薬剤です。
安易な考えで不必要なFFPを発注し廃棄処分に至らしめる行為は厳に慎むべきです。
<リンク>
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(2)非適応より続く。
第VII、VIII、IX、XIII因子など、安全で効果的な血漿分画製剤や遺伝子組み換え製剤など代替医薬品があればFFPは用いません。
他のビタミンK依存性凝固因子欠乏症(第II、第X因子)は、プロトロンビン複合濃縮製剤の適応が考えられます。
また、低・無フィブリノゲン血症、フォンヴィレブランド病には、濃縮フィブリノゲン製剤、フォンヴィレブランド因子を含む第VIII因子濃縮製剤(コンファクトF)を用います。
第XII因子、高分子キニノゲン欠乏症、プレカリクレイン欠乏症は出血傾向に乏しいのでFFPの適応となりません。
後天性TTPの場合、ADAMTS13の補充と自己抗体の除去を企図し、FFPを置換液とする血漿交換を行います。
先天性TTPはADAMTS13補充目的のFFP単独投与で良いです。
なお、後天性溶血性尿毒症症候群に対するFFPを用いた血漿交換療法の有効性は不明です。
FFP使用前にプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定します。
播種性血管内凝固症候群(DIC)や大量出血時はフィブリノゲン値も測定します。
検査値はFFPの適応判断に必要ですが、出血傾向が改善すれば検査値正常化を目指さなくて良いです。
(続く)新鮮凍結血漿製剤(FFP)(4)種類へ
<リンク>
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(1)適応より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(2)非適応
出血傾向や血栓症、TTP、観血的処置の予定が無ければ、FFPの適応となりません。
<新鮮凍結血漿製剤(FFP)の不適切使用>
・循環血漿量減少の改善と補充
・蛋白質源としての栄養補給
・創傷治癒の促進
・末期患者への投与
・その他:重症感染症の治療、播種性血管内凝固症候群(DIC)を伴わない熱傷の治療、人工心肺使用時の出血予防、非代償性肝硬変での出血予防
(続く) 新鮮凍結血漿製剤(FFP)(3)凝固因子製剤へ
<リンク>
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(1)適応
新鮮凍結血漿製剤(frozen fresh plasma: FFP)の使用目的は以下の通りです。
(1) 凝固因子、凝固阻止因子、線溶因子、血漿因子の補充による出血傾向・血栓症、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura: TTP)の治療(治療的FFP輸血)、
(2) 観血的処置時の出血予防(予防的FFP輸血)
厚生労働省. 「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」の改正について(平成24年3月一部改正). Available from: http://wwwmhlwgojp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/tekisei120319html (Accessed on 1 April 2013). 2013.
高松純樹. 血液製剤の適応と使用法 新鮮凍結血漿. 血栓止血誌. 2009;20(5):498-500.
<新鮮凍結血漿製剤(FFP)の適応疾患と病態>
(単に凝固・凝固阻止・線溶・血漿因子の低下だけでは適応になりません)
1 凝固因子の補充:PT延長(30%以下または国際標準比率 [INR] 2以上)、またはAPTT延長(25%以下または基準値上限の2倍以上)、または低フィブリノゲン血症(フィブリノゲン100 mg/dL未満)
・肝障害
・L-アスパラギナーゼ投与後(凝固阻止因子も低下)
・播種性血管内凝固症候群(DIC)
・大量輸血時(希釈性凝固障害の治療)
・安全で効果的な血漿分画製剤や遺伝子組み換え製剤の無い凝固因子欠乏症
・クマリン系薬剤効果の緊急補正(ビタミンK補給により可能な1時間以内の補正では不十分で、濃縮プロトロンビン複合体製剤が使用出来ない場合)
2 凝固阻止因子、線溶因子の補充
・プロテインC・プロテインS欠乏症(ヘパリンなど抗凝固療法を併用)
・プラスミンインヒビター欠乏症(トラネキサム酸など抗線溶薬を併用)
3 血漿因子の補充
・後天性血栓性血小板減少性紫斑病(FFPを置換液とした血漿交換)
・先天性血栓性血小板減少性紫斑病(FFP単独投与)
(続く)新鮮凍結血漿製剤(FFP)(2)非適応へ
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(8)注意点より続く。
濃厚血小板製剤(PC)インデックス
3)血小板数増加
4)血小板輸血不応
8)注意点
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(7)手術前の血小板数(トリガー値)より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(8)注意点
1. 現有の厚労省ガイドラインは、化学療法後の目標血小板数は1〜2万/µLと幅のある記載がされておりわかりにくいです。実際は1万/µL以上で済むことが多いです(濃厚血小板製剤(PC)(6)予防的輸血と血小板数)。
厚生労働省. 「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」の改正について(平成24年3月一部改正). Available from: http://wwwmhlwgojp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/tekisei120319html (Accessed on 1 April 2013). 2013.
2. 「血小板減少=血小板輸血必要」ではありません。
偽性血小板減少やサンプリングエラー(特に新生児)の可能性も念頭におく必要があります。
3. 化学療法や造血細胞移植、新生児血小板減少において、血小板輸血の適応判断に幼若血小板比率(IPF)測定が有用です。
最近自動計測が可能となり、積極的な活用が望まれます。
4. 血小板濃厚液10単位には、不安定な凝固因子を除いて、新鮮凍結血漿2.5単位に相当する凝固因子活性が含まれています。
5. 輸血副作用の種類・対応に関して、日本輸血・細胞治療学会よりガイドラインが発表されています(フリーアクセス)。輸血時は必携です。
日本輸血・細胞治療学会輸血療法委員会. 輸血副作用対応ガイド. Available from: http://wwwjstmctorjp/jstmct/Document/Guideline/Ref19-2pdf (Accessed on 1 April 2013). 2013.
(続く)
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(7)手術前の血小板数(トリガー値)
手術や処置の際に維持すべき血小板数(トリガー値)と方法の相談を受けることがあります。
トリガー値は、濃厚血小板製剤(PC)(6)予防的輸血と血小板数を参考に個々の病態を考慮し判断します。
血小板輸血の生体内半減期は3〜5日とされますが、実臨床では2日程度と考えた方がよいです。
たとえば、患者体重50 kg、術前血小板数2万/µL、トリガー値5万/µL、予定手術時間3時間、内視鏡的胆嚢切除術(非重要臓器)の例で考えてみたいと思います。
濃厚血小板輸血10単位輸血すれば、200÷50=4万/µL、6万まで増加が期待できます。
したがって、手術直前(通常は1時間前に輸血が終わるように)に濃厚血小板を10単位輸血すればよいです。
より慎重を期するため、血小板輸血しながら手術が実施されることもあります。
なお、可能なら術前血小板輸血終了15分後に血小板数を測定し、血小板数増加を確認します。
血小板輸血不応の可能性が否定できない場合や血小板数10万/µL以上が必要な場合は15分前の血算確認は強く望まれます。
(続く)濃厚血小板製剤(PC)(8)注意点へ
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(6)予防的血小板輸血において維持すべき血小板数(トリガー値)
1 血小板数5千/µL以上
・出血グレード1以下の造血不全
2 血小板数1万/µL以上
・出血グレード1以下(血液がん、化学療法、造血細胞移植造)
3 血小板数2万/µL以上
・出血グレード2
・凝固異常を伴う肝障害の合併
・播種性血管内凝固症候群(DIC)の合併
・急性前骨髄球性白血病
・38.5度以上の発熱
・活動性感染症(敗血症、発熱性好中球減少、肺炎など)
・抗凝固療法中
・壊死性腫瘍
・抗胸腺グロブリン治療
・血小板数が急激に減少(3日で2万/µL以上低下)
・白血球増多
・小児・新生児
・血小板製剤入手に制限がある(連休前、遠隔地、震災後など)
4 血小板数5万/µL以上
・出血グレード3以上
・腰椎穿刺前
・CVカテーテル設置前(5万/µL未満でも可能との意見もある)
・活動性出血後(肺出血や消化管出血など)
・血小板数10万/µL以上を必要としない手術
・全大腸内視鏡検査、気管支鏡検査
・針生検
5 血小板数10万/µL以上(血小板輸血終了)15分後血小板増加の確認が必要
・中枢神経など重要臓器の手術
・3時間以上人工心肺を使用する心大血管手術
・広範な癒着剥離を要する手術
・出血傾向を伴う慢性腎臓病や肝疾患を有する手術
(続く)濃厚血小板製剤(PC)(7)手術前の血小板数(トリガー値)へ
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(5)治療的&予防的血小板輸血
<治療的血小板輸血>
網膜、中枢神経系、肺、消化管など重要臓器の活動性出血には、血小板数5万/µL以上を保つように血小板輸血を行います。
<予防的血小板輸血>
1. 外科手術、検査、大量出血
眼・脳など中枢神経・重要臓器(「重要」の判断はしばしば主観的です)の手術、3時間以上人工心肺を使用する心大血管手術、広範な癒着剥離を要する手術、出血傾向を伴う慢性腎臓病や肝疾患を有する場合、血小板数(7〜)10万/µL以上を保つよう必要に応じ血小板輸血を行います。
血小板輸血終了15分後血小板増加を確認する必要があります。
その他の手術、人工心肺使用時、全大腸内視鏡検査、気管支鏡検査、針生検など侵襲的処置時に必要な血小板数は原則5万/µL以上です。
ただし、圧迫止血が可能な骨髄検査(生検を含む)時は通常予防的血小板輸血は不要です。
抜歯時も予防的血小板輸血は不要と思われますが、1万/µL以上を奨める意見もあります。
大量出血の場合は目安となる血小板数は無く、臨床的判断に基づき血小板輸血を行います。
2. 血液がん、化学療法、造血細胞移植、造血不全
出血グレードや病態を参考に血小板輸血の適応を考慮します。
出血に関するWHOグレード
グレード0:出血なし
グレード1:点状出血、紫斑、潜血(尿、便など)、経血増加
グレード 2:相当量の出血、ただし赤血球輸血必要量は増えない(鼻出血、肉眼的血尿、吐下血など)
グレード 3:1日1単位以上の赤血球輸血を要する出血
グレード4:生命を脅かす出血(出血性ショック、臓器出血、頭蓋内出血、心嚢内出血、肺出血など)
造血不全(再生不良性貧血、骨髄異形成症候群など)の場合、血小板数が5千/µL以上あり出血症状が皮下出血斑程度の軽微な場合、血小板輸血の繰り返しによる血小板輸血不応を回避するため、血小板輸血の適応にはなりません。
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(3)血小板数増加より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(4)血小板輸血不応の判断
濃厚血小板製剤を投与しても、十分血小板が増えるとはかぎません。
この状態を血小板輸血不応と呼びます。
血小板輸血不応の判断には、「補正血小板増加数(corrected count increment: CCI)[/µL]=(輸血後血小板数[/µL]−輸血前血小板数[/µL])×体表面積[m2] ÷輸血血小板数総数[×1011]を用います。
分母が輸血血小板数総数[×1011]であることに注意します。
すなわち濃厚血小板製剤10単位輸血すると分母は2になります。
CCI-24(輸血終了24時間後のCCI:輸血翌朝の測定値を用いてよい)が7,500/µL未満なら輸血不応と判断します。
通常は次の輸血時にCCI-1(輸血終了1時間後のCCI)を計算します。
CCI-1が4,500/µL未満なら免疫機序による血小板輸血不応を疑います。
CCI-24が7,500/µL未満でもCCI-1が4,500/µL以上なら、非免疫機序による血小板輸血不応を疑います。
実際は区別が難しい場合も多いです。
身長160 cm、体重50 kgの場合、体表面積は1.5 m2。
濃厚血小板製剤10単位輸血後血小板数が1万/µLから2万/µLへ増加したら、CCI=(2万-1万)×1.5 ÷2=7,500/µLと、CCI-24の閾値に一致します。
したがって、「濃厚血小板製剤10単位輸血後翌日の血小板が1万/µL以上増えなかったらおかしい」と覚えていてもよいです。
免疫機序による血小板輸血不応が疑われた場合、抗HLA抗体や抗血小板特異抗原(HPA)に対する抗体の有無を調べます。
原因が特定できない場合、特発性血小板減少性紫斑病や血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、ヘパリン起因性血小板減少も疑います。
抗HLA抗体や抗HPA陽性の場合、HLA、HPA適合濃厚血小板製剤を用います。
血小板はHLA class IIを発現していないため、通常はHLA -AとBのみ合わせればよいです。
HLA、HPA適合濃厚血小板製剤の場合、ABO血液型不適合血を受け入れざるをえません。
ただし、溶血性副作用や新たな血小板輸血不応を来たすことがあるため、注意します。
HLA、HPA適合濃厚血小板製剤を用いた場合、必ずCCI-1、CCI-24を測定し、有効性を評価します。
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(2)種類より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(3)濃厚血小板製剤による血小板数増加
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(1)適応より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(2)濃厚血小板製剤の種類
<リンク>
濃厚血小板製剤(PC)(1)濃厚血小板製剤の適応
<リンク>
輸血の副作用とその対策 <インデックス>
1)副作用頻度(表1)
2)重篤副作用の診断(表2)
3)溶血性副作用
4)アレルギー/アナフィラキシー
5)TRALI/TACO
6)輸血後鉄過剰症
【リンク】
TRALI/TACO:輸血の副作用とその対策(5)より続く。
<輸血後鉄過剰症治療アルゴリズム>
輸血後鉄過剰症
赤血球輸血を繰り返しますと早晩鉄過剰症となります。
輸血後鉄過剰症は、鉄キレート剤デフェラキシロクス(商品名エクジェイド)の服用で、予後改善が期待できます。
藤井靖彦(研究代表者): 輸血副作用対応ガイド. 日本輸血・細胞治療学会輸血療法委員会, 2011
小澤敬也(研究代表者): 輸血後鉄過剰症の診療ガイド. 厚労省特発性造血障害に関する調査研究班, 2008
血液学的改善効果も報告されています。
Gattermann N, Finelli C, Porta MD, et al: Hematologic Responses In Myelodysplastic Syndromes (MDS) Patients Treated with Deferasirox: An EPIC Post-Hoc Analysis Using International Working Group (IWG) 2006 Criteria. ASH Annual Meeting Abstracts 116:2912-, 2010
厚労省研究班ガイドラインは、1年以上の余命が期待できる患者を鉄キレート剤治療の対象と定めています(上図)。
骨髄異形成症候群の場合、International Prognostic Scoring System(IPSS)上、高リスクグループの平均生存期間は0.4年です。
ですから、これよりリスクの低い3グループ(中間リスク2 [平均生存期間1.2年]、中間リスク1 [平均生存期間3.5年] 、低リスク [平均生存期間5.7年])が治療対象となります。
輸血後鉄過剰症のサロゲートマーカーである血清フェリチン値が500-1,000 ng/mLになるようにデフェラシロクスを調整します。
まとめ
1)最も重要な輸血副作用は、ABO不適合輸血とアナフィラキシーショックです。
2)輸血後肺水腫症状がみられれば、輸血関連急性肺障害と輸血関連循環過負荷を第一に考えます。
3)輸血後鉄過剰症は、デフェラシロクス内服により予後改善が期待できます。
(続く)輸血の副作用とその対策 <インデックス> へ
【リンク】
アレルギー/アナフィラキシー:輸血の副作用とその対策(4)より続く。
TRALI(transfusion-related acute lung injury、輸血関連急性肺障害)
輸血後6時間までに起こる輸血による非心原性肺水腫であり、治療も急性肺障害に準じます(重篤副作用の診断)。
輸血副作用死亡の約半数を占めます。
外来輸血の場合、離院後発症する恐れもあります。
診断を確定するために、日本赤十字血液センターに依頼し、血液製剤と患者血清中の抗白血球抗体を調べます。
国内は輸血2-5千件に1件程度とされますが(副作用頻度)、過少評価されているかもしれません。
輸血関連循環過負荷(transfusion-associate circulatory overload: TACO)との鑑別が問題になります。
TACO(transfusion-associated circulatory overload、輸血関連循環過負荷)
輸血の容量負荷により起こる心不全です(重篤副作用の診断)。TRALIと鑑別困難な場合が多いです。
GVHD(graft-versus-host disease、移植片対宿主病)
輸血に含まれるリンパ球が、HLA一方向不適合などにより生着し、患者の骨髄や皮膚、肝、消化管を攻撃する致死的疾患です(重篤副作用の診断)。
放射線照射で完全に予防できます。
未照射血の購入は、リスク管理の観点からも勧められません。
高カリウム血症
赤血球製剤2単位中のカリウム量は1-3 mmol程度であり、輸血で高カリウム血症を来すことは少ないです。
ただし、大量輸血や腎不全、新生児では注意します。
輸血感染症
日本赤十字血液センターは、全輸血用血液の、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス-1(HTLV-1)、ヒト免疫不全ウイルス-1/2(HIV-1/2)、ヒトパルボウイルスB19、サイトメガロウイルス(CMV)、梅毒の血清スクリーニング検査を行っています(HBV、HCV、HIVは核酸増幅スクリーニング検査も実施しています)。
また、E型肝炎(HEV)好発地域の北海道は、HEV核酸増幅スクリーニング検査も施行しています。
その結果、輸血感染症は近年激減しています(副作用頻度)。
なお、平成16年4月1日以降使用の生物由来製品を介した感染等で健康被害が生じた場合、生物由来製品感染症等救済制度による医療費・障害年金等の給付が受けられます。
【リンク】