TRALI/TACO:輸血の副作用とその対策(5)
アレルギー/アナフィラキシー:輸血の副作用とその対策(4)より続く。
TRALI(transfusion-related acute lung injury、輸血関連急性肺障害)
輸血後6時間までに起こる輸血による非心原性肺水腫であり、治療も急性肺障害に準じます(重篤副作用の診断)。
輸血副作用死亡の約半数を占めます。
外来輸血の場合、離院後発症する恐れもあります。
診断を確定するために、日本赤十字血液センターに依頼し、血液製剤と患者血清中の抗白血球抗体を調べます。
国内は輸血2-5千件に1件程度とされますが(副作用頻度)、過少評価されているかもしれません。
輸血関連循環過負荷(transfusion-associate circulatory overload: TACO)との鑑別が問題になります。
TACO(transfusion-associated circulatory overload、輸血関連循環過負荷)
輸血の容量負荷により起こる心不全です(重篤副作用の診断)。TRALIと鑑別困難な場合が多いです。
GVHD(graft-versus-host disease、移植片対宿主病)
輸血に含まれるリンパ球が、HLA一方向不適合などにより生着し、患者の骨髄や皮膚、肝、消化管を攻撃する致死的疾患です(重篤副作用の診断)。
放射線照射で完全に予防できます。
未照射血の購入は、リスク管理の観点からも勧められません。
高カリウム血症
赤血球製剤2単位中のカリウム量は1-3 mmol程度であり、輸血で高カリウム血症を来すことは少ないです。
ただし、大量輸血や腎不全、新生児では注意します。
輸血感染症
日本赤十字血液センターは、全輸血用血液の、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス-1(HTLV-1)、ヒト免疫不全ウイルス-1/2(HIV-1/2)、ヒトパルボウイルスB19、サイトメガロウイルス(CMV)、梅毒の血清スクリーニング検査を行っています(HBV、HCV、HIVは核酸増幅スクリーニング検査も実施しています)。
また、E型肝炎(HEV)好発地域の北海道は、HEV核酸増幅スクリーニング検査も施行しています。
その結果、輸血感染症は近年激減しています(副作用頻度)。
なお、平成16年4月1日以降使用の生物由来製品を介した感染等で健康被害が生じた場合、生物由来製品感染症等救済制度による医療費・障害年金等の給付が受けられます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17| 輸血学