金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年01月03日

血友病Aにおける手術とインヒビター


血友病A患者に対する強力な補充療法は、第VIII因子インヒビター発症の危険因子であることが知られています。

これに手術の影響を加味するとどうなるかを検討した論文を紹介させていただきます(参考:後天性血友病PT-INRAPTT)。



「血友病Aにおける手術とインヒビター発症(Systematic review) 」


著者名:Eckhardt  CL, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 9: 1948-1958, 2011.


<論文の要旨>


血友病A患者に対して強力な補充療法を行うと第VIII因子インヒビターを発症しやすいことが知られていますが、手術の関与の有無は不明です。

手術に伴う組織損傷に起因する免疫学的な危険シグナル(高濃度の第VIII因子抗原血症の状態で)は、第VIII因子に対する抗体産生を誘発する可能性があります。

著者らは、第VIII因子製剤投与下の外科手術におけるインヒビター出現のリスクを、出血時の補充療法および予防投与の場合と比較しました(systematic review)。

対象は血友病A 957例で、342例はインヒビターを保有していました(cohort study 4, case control study 3)。


その結果、強力な補充療法はインヒビター発症リスクを上昇させ、特に5日間以上の強力治療は3日間未満に比較して明らかに上昇させました(OR 4.1)。

手術時に初めて強力な治療が行われた重症血友病Aのインヒビター発症を、出血時の補充療法や予防治療と比較するとオッズ比は4.1となりました。


以上、血友病A患者に対する手術時の強力な補充療法は、特に初回治療例においてインヒビター発症のリスクを高めるものと考えられました。

【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27| 出血性疾患