金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年01月04日

血友病A:VWF含有血漿由来第VIII因子製剤と免疫寛容療法


血友病A患者でインヒビター(参考:第VIII因子インヒビター)が出現しますと、第VIII因子製剤の効果が激減しますので、その対策は重要です。

最も本質的な治療は、インヒビターを消失させることですが、免疫寛容導入療法(ITI)がその目的を果たせる治療として知られています。

ITIに使用する製剤は何が良いのでしょうか。

今回紹介させていただく論文は、血漿由来第VIII因子製剤(VWF/pd-FVIII)製剤の意義を論じています(参考:後天性血友病PT-INRAPTT)。



「血友病AにおけるVWF含有血漿由来第VIII因子製剤を用いた免疫寛容導入療法


著者名:Kurth M, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 9: 2229-2234, 2011.


<論文の要旨>

重症血友病A患者におけるインヒビター発症は重大な合併症です。


免疫寛容導入療法(ITI)は、インヒビターを消失させる本質的な治療です。

ITIに用いる濃縮製剤の種類、特にvon Willebrand因子(VWF)含有の血漿由来第VIII因子製剤(VWF/pd-FVIII)製剤の意義は不明です。

著者らは、VWF/pd-FVIIIの1剤のみを使用してITI(初回治療および救済治療)を行った臨床試験について後方視的にデータを集積しました。


対象は米国の11施設においてITI目的にVWF/pd-FVIIIの輸注を受けた血友病インヒビター保有症例です。


初回ITIが行われた8症例では、75%において完全または部分的に成功しました。

2回目のITIが行われた25症例では52%において完全または部分的に成功しました。


以上、初回または救済ITIを行うに際しVWF/pd-FVIIIは有効と考えられましたが、特にITIに対する反応が不良の症例において考慮すべき治療ではないかと考えられました。




【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 出血性疾患