2012年01月05日
APCインヒビターと血友病A患者トロンビン形成能
血友病A患者の止血治療は、第VIII因子製剤による補充療法が基本ですが、発展途上国では補充療法がままなりません。
今回紹介させていただく論文は、その代替え治療に関する検討です。
(参考)後天性血友病、PT-INR、APTT、第VIII因子インヒビター)。
「APCインヒビターは、血友病A患者の全血および血漿におけるトロンビン形成能を是正する 」
著者名:Brummel-Ziedins KE, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 9: 2262-2267, 2011.
<論文の要旨>
血友病患者に対する補充療法は費用がかかり、また発展途上国の多くでは入手困難です。
著者らは、血友病治療に用いることができる低分子量の薬剤を開発し評価しました。
その薬剤は、PNASN-1という合成薬剤であり、活性化プロテインC(APC)に対するインヒビター活性を有しています。
APTT法によるAPCレジスタンス測定においては、PNASN-1はAPCの作用を部分的に中和しました。
トロンボグラフィーでは、PNASN-1はAPCによる正常血漿および第VIII因子欠乏血漿(FVIII:C<1%)におけるトロンビン形成抑制作用を中和しました。
血友病A症例(FVIII:C<1〜51%)の新鮮全血を用いた組織因子誘発のアッセイでは、トロンビン形成能を増加させました(78nmから162nmへ)。
このレベルは健常人における結果(201nm)に迫るものでした。
また、PNASN-1は血友病A全血における凝血壊の重量を47%増加させました。
以上、特異的APCインヒビター(PNASN-1)は、第VIII因子欠損状態における凝血能を有意に代償するものと考えられ、血友病治療へ応用化の可能性があるものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27| 出血性疾患