2012年01月09日
ステロイド投与中の後天性血友病発症:自己免疫水疱症
第VIII因子インヒビター(後天性血友病)は、近年なにかと話題になりやすい重要疾患です。
自己免疫性疾患に合併することもあるため、ステロイド投与中のこともあると思いますが、ステロイド投与中であっても後天性血友病を発症するようです。
(参考)血友病、後天性血友病、PT-INR、APTT、第VIII因子インヒビター
「著明な筋肉内血腫をきたした後天性血友病の1例」
著者名:高橋有我、他。
雑誌名:日本内科学会雑誌 100: 3052-3054, 2011.
<論文の要旨>
83歳、男性、既往に水疱性類天疱瘡があり、プレドニゾロン10mg/日内服中でした。
誘因なく右下肢の筋肉内血腫が生じ、続いて側腹部および前腕の紫斑を認めました。
第VIII因子インヒビターが検出され、後天性血友病と診断されました。
プレドニゾロン1mg/kg/日とともに活性型第VII因子製剤(ノボセブン)を併用しました。約1ヵ月後にインヒビター活性が消失、APTTは正常化しました。
自己免疫性水疱症に後天性血友病を合併した稀な症例と考えられます。
後天性第VIII因子インヒビターを生じた症例のうち基礎疾患を有する割合は69%であり、中でも自己免疫疾患が24%と最も多く、次いで悪性腫瘍19%、糖尿病9%がこれに続くとされています(嶋先生の報告)。
発症前の使用薬剤では副腎皮質ホルモン剤の使用頻度が高いです。
本症例でも水疱性類天疱瘡に対し、プレドニゾロン10mg/日が投与されていたにも拘わらず、インヒビターの発生をみています。
本邦において自己免疫水疱症に後天性血友病を合併した報告は著者らの例を含め27例(内訳:水疱性類天疱瘡17例、尋常性天疱瘡9例、後天性表皮水疱症1例)であり、本疾患が認知されるにつれ、ここ数年報告が増えています。
後天性血友病の特徴として、出血部位が皮下や筋肉内であることが多いです。
本症例でも、腸腰筋出血がみらましたが、体内深部の出血の進行を評価することが困難でした。
このためHb値を指標とし、回復傾向となる第9病日まで活性型第VII因子製剤を使用しました。
後天性血友病は本症例のような比較的少量の副腎皮質ステロイドを使用されている場合にも生じ、凝固異常を伴う突然の出血傾向を認めた際は、本疾患も鑑別する必要があります。
また、高度の貧血や進行性の出血症状に対するバイパス療法と、インヒビター産生の抑制のため早期からの適切な免疫抑制療法が治療上重要です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44| 出血性疾患