2012年01月10日
後天性血友病A:検査血液学会
後天性血友病は、血液内科で診療(あるいはコンサルト)されることが多いかもしれませんが、多くの領域から関心の持たれる疾患です。
具体的には、臨床検査医学、薬剤部、膠原病内科、産婦人科など多くの領域から注目される疾患です。今回紹介させていただく論文は、日本検査血液学会雑誌に掲載された論文です。
発生頻度は年間人口100万に対して1.5人というのは、かなりの過少評価ではないでしょうか。本疾患であったにもかかわらず診断されなかった、いわゆる「隠れ後天性血友病A」の症例がそれなりにいらっしゃるのではないかと推測しています。
(参考)血友病、後天性血友病、PT-INR、APTT、第VIII因子インヒビター
「後天性血友病A」
著者名:西屋克己、他。
雑誌名:日本検査血液学会雑誌 12: 305-311, 2011.
<論文の要旨>
後天性血友病Aは、悪性疾患、自己免疫疾患や妊娠などを基礎として、これまでに出血歴や家族歴がない患者に、後天性に第VIII因子に対する自己抗体(インヒビター)が発生し、重篤な出血症状を呈する疾患です。
発生頻度は年間人口100万に対して、1.5人と報告されていて、年齢分布は、60〜70歳台に第1のピークと、20〜30歳台に第2の小さなピークが認められます。
後天性血友病Aの出血症状は、皮下出血や筋肉内出血が多く、先天性血友病Aに認められるような関節内出血は少ないです。
治療には、急性出血に対する止血療法と、インヒビターの消失を目的とした免疫抑制療法があります。
止血療法には、バイパス止血製剤である活性型プロトロンビン複合体製剤と、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤の2種類があります。
免疫抑制療法では、プレドニゾロン単独か、シクロフォスファミドの併用が行われることが多いです。
近年、リツキシマブの使用も注目されています。
後天性血友病Aは、わが国でもその認識が高まりつつあり、今後さらに症例数も増加するものと思われます。
しかしながら、その発症機序や病態は不明な点も多く、さらなる病態解明が望ましいです。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:21| 出血性疾患