金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年01月12日

インヒビター保有血友病と活性型プロトロンビン製剤予防投与


インヒビター保有の血友病患者に対する活性型プロトロンビン製剤の予防投与の是非に関して論じた、N Engl J Med の論文を紹介させていただきます。

(参考)血友病後天性血友病PT-INRAPTT第VIII因子インヒビター



「インヒビター保有血友病患者に対する活性型プロトロンビン製剤の予防投与


著者名:Leissinger C, et al.
雑誌名:N Engl J Med 365: 1684-1692, 2011.


<論文の要旨>

重症血友病Aに第VIII因子インヒビターを発症しますと、重症の出血をきたし関節症が進行しやすくなりますが、その治療法はまだ確立していません。

著者らは、高力価インヒビター保有血友病A(2歳以上、バイパス製剤使用中)を対象に、前向き無作為交差試験を行いました。以下2群間の比較を行いました。

I群活性型プロトロンビン複合体剤(AICC)85単位/kgを週に3回予防投与(6ヵ月間)

II群出血時AICC 85単位/kg投与(6ヵ月間)

両治療間に、3ヵ月間の休薬期間をもうけました。
34症例が登録され、26症例では両群の治療が行われました。


I群においてはII群と比較して、全出血エピソードが62%低下(P<0.001)、関節症が61%低下(P<0.001)、標的関節の出血(6ヶ月の治療期間中単節関節における関節血症が3回以上)が72%減少(P<0.001)しました。


少なくとも1回のAICC輸注が33症例において行われましたが、1例においてアレルギー反応をおこしました。


以上、インヒビター保有の重症血友病Aに対して、AICCの予防投与は有効かつ安全な治療法と考えられました。



【リンク】
 
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 出血性疾患