金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2012年01月25日

金沢大学呼吸器研究室便り(3)

金沢大学呼吸器研究室便り(2)より


平成23年度研究室だより
金沢大学呼吸器研究室(3) 


3.肺癌グループ(LKグループ)
21世紀になって肺癌の薬物療法は飛躍的な変化を遂げた。
その第一が2002年に臨床応用された上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor, EGFR)阻害剤のゲフィチニブであろうと考えられる。

ゲフィチニブはEGFR遺伝子変異陽性の肺癌には著効を示すが、陰性の症例にはほとんど効果がないことが、我々も参加したIPASS試験から明らかになっている。

一方で目覚ましい腫瘍縮小効果が得られても、1年弱ほどで耐性化し、次の治療法を選択しなければならない。

酒井先生はこの問題を基礎的な観点から挑戦し、cMetという蛋白の過剰発現が原因でEGFR阻害剤が耐性となった肺癌細胞株を用いて、細胞障害性抗がん剤であるイリノテカンの標的分子のTopoisomerase Iが過剰発現していることを見出し、イリノテカンが高感受性になることを見出した。

すなわちEGFR阻害剤になった肺癌はイリノテカンがよく効くという仮説を証明した。

この研究成果をもとに、現在黒川先生は、このcMet蛋白発現とTopoisomerase I蛋白発現の関連を普遍化すべく検討している。

イリノテカンは非小細胞肺癌のみならず、小細胞肺癌でもよく用いられている。

むしろ小細胞肺癌でこそ使用頻度が多く、cMet蛋白とTopoisomerase I蛋白発現の関連は興味深いところである。

池田先生はこの点に着目し、小細胞肺癌の生検材料を用いてcMetとTopoisomerase I蛋白発現の関連を解析中である。
臨床面では数多くの臨床試験に参加できるようになった。

前述のIPASSを含めたEFGR-TKIの臨床試験や新しい分子標的治療薬の臨床試験に参加し、症例をエントリーしている。

エントリー数ではまだトップとは言えないが、それでもBest 15には入るようになり、国立大学機構の中だけで数えるとトップ3には入るようになった。

これは病棟を担当している研修医、指導医、上級医、外来担当医がすべて一致協力してできたものと喜んでいる。

またグループ主導の臨床試験として、EGFR遺伝子変異陰性非小細胞肺癌に対するErlotinibの有用性予測因子を探索する第II相試験、高齢者非小細胞肺がんに対するPEMとPEM+ベバシズマブの無作為化第II相試験、TS-1の維持療法の第II相試験など自主研究も行っている。

肺癌化学療法は個別化医療へと向かっていると考えられ、これに遅れないように皆、頑張っている。
 

(続く)

 

咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(インデックス)


【関連記事】  咳嗽の診断と治療

1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30| 呼吸器内科