金沢大学血液・移植研究室便り(2)
金沢大学血液・移植研究室便り(1)より続く。
血液・移植グループ(2)
4-1.研究
血液・移植研究グループの主な研究テーマは、中尾教授のライフワークである「再生不良性貧血の病態解明」と「造血幹細胞移植による難治性血液疾患の治療」です。
学内在籍メンバーの研究内容を紹介します。
造血不全の基礎研究スタッフはすっかり代替わりしました。
牽引しているのは博士研究員の片桐孝和さん(2011年11月より保健学科助教に就任)と大学院3年目の細川晃平先生です。
片桐さんは、一部の再生不良性貧血患者では6pUPD(UPD, uniparental disomy:片親由来の遺伝子が2本ある、みかけ上のloss of heterozygosity)によってある特定のアレルが欠失していることを見出し、これらのHLAの保有が再生不良性貧血の発症リスクとなっている可能性を指摘しました(Blood 2011;118:6601-9.)。
細川先生は再生不良性貧血における染色体異常(特に13q-)の意義や抑制性サイトカインであるTGF-βの意義について検討し、その一部は今年の4月に長崎で行われたJSH 国際シンポジウムで発表し注目を浴びました。
細川先生に弟子入りした(?)某先生は、自己免疫性骨髄不全に関与している遺伝子変異解析や、EBV関連リンパ増殖性疾患におけるNK細胞の細胞傷害活性の差を検討するためにNKG2D遺伝子多型解析に取り組んでいます。
再生不良性貧血の診断には骨髄の巨核球減少が重要な所見の一つです。
しかし、骨髄穿刺や骨髄生検のみで巨核球数の正確な評価をするのはしばしば困難です。
そこで、清木ゆう先生は巨核球造血を評価する新たなマーカーとして血漿トロンボポエチン(TPO)値に注目しました。
血小板数10万/μL未満の再生不良性貧血および骨髄異形成症候群(MDS)患者を対象に血漿TPO値を測定したところ、免疫抑制療法(IST)が奏功する骨髄不全はTPO値が高く、high risk MDSはTPOが低値であることを見出し、血漿TPOの測定がISTの治療効果予測に役立つマーカーとなる可能性を報告しました。
我々が従来取り組んできたPNH型血球検出に並ぶ第二のマーカーとして期待されています。
医学系修士課程2年目の佐々木祐美さんは、PCRを用いたヒトアンドロジェンレセプターアッセイ(HUMARA)を用いて、6pUPD陽性幹細胞に由来する顆粒球がクローン性であることを示しました。
また、現在はクローン性造血とテロメア長短縮との関係を検討しています。
(続く)金沢大学血液・移植研究室便り(3)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| 血液内科