2012年02月13日
DICの治療:急性前骨髄球性白血病(APL)
DICの治療(基礎疾患別)(10)急性前骨髄球性白血病(APL)
APLに合併したDICの治療
APLは、典型的な線溶亢進型DICを発症します。
DICに対して適切な治療が行われませんと、脳出血を含め、致命的な出血をきたすことがあります。
急性白血病の中でも、APLに合併したDICの特殊性として、ATRAによる治療が行われることがあります。
ATRAは、APLの分化誘導としても有効であるが、APLに合併したDICに対してもしばしば著効します。
しかも、APLの分化誘導に成功するよりも遥かに早く、DICの改善傾向をもたらすことも多いです(1〜2日くらいのこともあります)。
これに伴い、出血症状も速やかに消退することが多いです。
APLにおいてDICを発症する原因は、他の白血病と同様に、白血病細胞中に含有されているTFによる外因系凝固機序の活性化と考えられています。
さらに、APLにおいて線溶亢進型DICを合併する理由は、APL細胞に存在するアネキシンIIの果たす役割が大きいと考えられています。
Menell, et al: Annexin II and bleeding in acute promyelocytic leukemia. N Engl J Med 340: 994-1004, 1999.
アネキシンIIは、組織プラスミノゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator:t-PA)と、プラスミノゲンの両線溶因子と結合することが可能ですが、このことで、t-PAによるプラスミノゲンの活性化能が飛躍的に高まることが知られています。
大変興味深いことに、APLに対してATRAを投与しますと、APL細胞中のTFが抑制されることに加えて、上記のアネキシンIIの発現も抑制されます。
このため凝固活性化と線溶活性化に同時に抑制がかかり、APLのDICは速やかに改善するものと考えられます。
なお、ATRAによるアネキシンII発現の抑制は相当に強力であるらしく、APLの著しい線溶活性化の性格は速やかに消失します。
前述のように、APLに対してATRAを投与している場合に、トラネキサム酸を投与すると全身性血栓症や突然死の報告がみられます。
APLに対してATRAを投与する場合には、トラネキサム酸は絶対禁忌です。
(続く)DICの治療:敗血症へ
【リンク】
APLは、典型的な線溶亢進型DICを発症します。
DICに対して適切な治療が行われませんと、脳出血を含め、致命的な出血をきたすことがあります。
急性白血病の中でも、APLに合併したDICの特殊性として、ATRAによる治療が行われることがあります。
ATRAは、APLの分化誘導としても有効であるが、APLに合併したDICに対してもしばしば著効します。
しかも、APLの分化誘導に成功するよりも遥かに早く、DICの改善傾向をもたらすことも多いです(1〜2日くらいのこともあります)。
これに伴い、出血症状も速やかに消退することが多いです。
APLにおいてDICを発症する原因は、他の白血病と同様に、白血病細胞中に含有されているTFによる外因系凝固機序の活性化と考えられています。
さらに、APLにおいて線溶亢進型DICを合併する理由は、APL細胞に存在するアネキシンIIの果たす役割が大きいと考えられています。
Menell, et al: Annexin II and bleeding in acute promyelocytic leukemia. N Engl J Med 340: 994-1004, 1999.
アネキシンIIは、組織プラスミノゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator:t-PA)と、プラスミノゲンの両線溶因子と結合することが可能ですが、このことで、t-PAによるプラスミノゲンの活性化能が飛躍的に高まることが知られています。
大変興味深いことに、APLに対してATRAを投与しますと、APL細胞中のTFが抑制されることに加えて、上記のアネキシンIIの発現も抑制されます。
このため凝固活性化と線溶活性化に同時に抑制がかかり、APLのDICは速やかに改善するものと考えられます。
なお、ATRAによるアネキシンII発現の抑制は相当に強力であるらしく、APLの著しい線溶活性化の性格は速やかに消失します。
前述のように、APLに対してATRAを投与している場合に、トラネキサム酸を投与すると全身性血栓症や突然死の報告がみられます。
APLに対してATRAを投与する場合には、トラネキサム酸は絶対禁忌です。
(続く)DICの治療:敗血症へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13| DIC