医師国家試験:血小板数低下
医師国家試験:血小板数増加より続く。
106回医師国家試験の問題紹介を続けさせていただきます。
【設問】
45歳の男性。意識障害のため搬入された。
5日前から38℃台の発熱が続いていた。昨日から傾眠状態となり、次第に増悪してきたため家族が救急車を要請した。下痢と血便とはなかったという。
意識レベルはJCSII-30。身長158cm,体重59kg.体温39.0℃.脈拍88/分,整.血圧110/70mmHg.呼吸数28/分.皮膚に出血斑を認める。
尿所見:蛋白2+,潜血2+.
血液所見:赤血球138万,Hb 4.1g/dl,Ht 16%,白血球8,000,網赤血球5%,血小板1.2万,PT 97%(基準80〜120),APTT 32秒(基準対照32).血液生化学所見:総蛋白6.9g/dl,アルブミン3.3g/dl,尿素窒素24mg/dl,クレアチニン0.9mg/dl.
心電図と胸部X線写真とに異常を認めない。
末梢血塗抹May-Giemsa染色標本(略):赤血球破砕像あり。血小板がほとんど見られていない。
治療として適切なのはどれか.
a 血小板輸血
b 抗DIC療法
c 血漿交換療法
d Helicobacter pylori除菌
e 免疫グロブリンの大量投与
【解説】
意識障害、発熱、血小板数減少(ただしPT、APTTは正常)、貧血(赤血球破砕を伴う)が見られています。特に、赤血球破砕像は特徴的で、血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy:TMA)と考えられます。
本症例では、腎機能障害はみられていません(HUSではありません)。
おそらくDICではないとの出題者の意図であると思われますが、本当はPT、APTTのみではDIC合併を否定しきれあせん。
実臨床では、DIC合併の有無のチェックのためにはFDP、Dダイマー、TATなどの測定が不可欠です(参考:DIC図解シリーズ )。
診断は、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)です。
a 血小板輸血は、TTPに対して禁忌です。
b DICではないので、DICの治療は行ってはいけません。
c 血漿交換療法は、TTPに対するfirst choiceです。
d Helicobacter pylori除菌療法は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対して行われることがあります。
e 免疫グロブリンの大量投与は、ITPに対する摘脾術に先立ち、一過性に血小板数を上昇させる目的で行われることがあります。
TTPでは、微小血管内皮障害、および血小板活性化が原因となって、微小な血小板血栓が多発し、血小板数低下に伴う出血傾向とともに、動揺する精神症状をきたします。
多発した微小血栓間を通過するため、赤血球破砕し溶血性貧血の所見もきたします。
<TTPの五主徴>
1. 血小板数減少
2. 溶血性貧血(赤血球破砕像)
3. 動揺する精神症状
4. 腎障害
5. 発熱
TTPの発症機序が近年明らかになりました。
ADAMTS13(von Willebrand因子(vWF)切断酵素(vWF-CP)とも言います)に対する自己抗体が出現することにより、この酵素活性が著減します。
その結果、unusually large vWFが出現し、血小板凝集が進行します。
溶血性尿毒症症候群(HUS)では、この自己抗体の出現はありません。
【正解】c
(続く)医師国家試験:ビタミンK依存性凝固因子へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38| 医師国家試験・専門医試験対策