後天性血友病とリツキシマブ
第VIII因子インヒビター(後天性血友病)の抗体(インヒビター)を消失させることを目的とした第一選択薬はステロイドだと思いますが、ステロイドの副作用を考えますと代替治療を考慮することもあります。
「多発性骨髄腫に第VIII因子インヒビターを発症した症例に対するリツキシマブとIVIG治療 」
著者名:Muzaffar, J. et al.
雑誌名:Int J Hematol 95: 102-106, 2012.
<論文の要旨>
後天性第VIII因子インヒビター(AFI)は稀な疾患です。
AFIが多発性骨髄腫に合併するとなると更に稀であり、文献的には症例報告が5報のみです。
AFIの基礎疾患としては、固形癌、造血器悪性腫瘍、自己免疫疾患、感染症などが知れれています。
症状として、粘膜皮膚出血が最も高頻度です。
診断は臨床検査医学的に行われ、APTTの延長(正常血漿で補正されない延長)、第VIII因子活性・抗原の低下、第VIII因子インヒビター陽性(ベセスダ法)を確認します。
止血目的にはバイパス製剤(FEIBAやrFVIIa)が用いられ、インヒビター力価を低下させる目的にはステロイド、サイクロフォスファマイドが用いられます。
ステロイド不応例では、リツキシマブが投与されることもあります。
可能な症例ではAFIの基礎疾患を治療します。
著者らは、多発性骨髄腫に第VIII因子インヒビターを発症し、致命的な出血性心嚢水や関節内出血をきたした症例を経験しています。
この症例では急性出血に対する止血目的にFEIBAが投与されました。
多発性骨髄腫に対して毎週デキサメタゾン(ステロイド)投与中にもかかわらずAFIを発症したこと、ステロイドを継続することは致命的な感染症が懸念される症例であったことより、AFIを抑制する目的でリツキシマブと免疫グロブリンの併用量法が行われ、有効でした。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02| 出血性疾患