金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2012年03月19日

血友病の冠動脈石灰化と頸動脈内膜中膜肥厚度

最近のシリーズで紹介させていただいている論文では、血友病の動脈硬化関連の報告が多くありました。

それだけ、血友病のコントロールが良好になってきているために(一般男性と変わらない予後になってきているために)、一般男性と同様に動脈硬化関連の懸念が出て来ているということではないかと思います。

 

「血友病患者における冠動脈石灰化指数と頸動脈内膜中膜複合体肥厚度 」

著者名:Zwiers, M. et al.
雑誌名: J Thromb Haemost 10: 23-29, 2012.


<論文の要旨>

血友病患者は、心血管疾患になりにくいかどうかは議論となるところです。

著者らは、血友病患者における動脈硬化度を、冠動脈石灰化指数(CACS)および内膜中膜複合体肥厚度(IMT)で評価しました。


血友病69例(血友病A 51例、血友病B 18例:年齢中央値52才)を対象としました。

心血管危険因子および主要心血管イベント(MACEs)の情報を収集しました。

CACSは、電子ビームCTまたはdual-source CTで検査し、頸動脈IMTはエコーで評価し、同年齢標準値と比較しました。


全血友病患者CACS中央値は35、IMTは0.80mmであり、比較標準値と同等でした。

MACEの既往のあった症例(n=9)では既往のなかった症例と比較して、CACSおよびIMTは有意に高値でした(MACE有vs無:CACS 1013 vs.0、IMT 1.09mm vs. 0.76mm, P<0.001)。


以上、今回のCACSとIMTによる検討からは、血友病症例は動脈硬化の進展が抑制されている訳ではないと考えられました。

また、動脈硬化の程度は、従来より知られている心血管危険因子と関連していたため、血友病患者においても心血管危険因子のモニターを行い加療すべきと考えられました。


<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54| 出血性疾患