厚生労働省DIC診断基準の改訂へ(1)
参考書籍:「臨床に直結する血栓止血学」(DICに関しては特に詳述されています)
第21回検査血液学会学術集会(金沢2020年):DICのシンポジウムあり
参考書籍リンク:しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編 ← クリック
DIC診断基準の改訂へ(1)
播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断基準として最も頻用されているのは、厚生労働省DIC診断基準です(上図)。
基礎疾患、臨床症状(出血症状/臓器症状)、血小板数、FDP、フィブリノゲン、PT比(患者PT/正常対照PT)によってスコアリングして診断します。
骨髄抑制をきたすような白血病群では、出血症状、血小板数を含めません。
典型的なDICにおける、臨床・検査所見を網羅している点が特徴ですが、早期診断には不向きとの指摘があります。
この診断基準では、非白血病群では7点以上、白血病群では4点以上の場合にDICと診断されますが、厚生労働省研究班のアンケート調査によりますと、実際の臨床の場では、7割の臨床家が非白血病群では6点、白血病群では3点でDIC治療を開始している実状があります。
急性期DIC診断基準は、より早期診断が可能な診断基準として救急領域において期待されています。特に、感染症に合併したDICの診断には威力を発揮しますが、造血器悪性腫瘍(白血病群)には適応できません。
ISTH(国際血栓止血学会)の診断基準は、日本の厚生労働省診断基準を模して作成されたものですが、さらに早期診断には不向きであるという指摘が多いです。
残念ながら、現在ベストと言える診断基準はなく、今後の発展が期待されます。
管理人らは、DICの本態である凝固活性化を反映するマーカー(TAT、SFなど)を是非とも診断基準に組み込むべきであると考えています。
また、線溶活性化の程度によりDIC病態は大きく変わるため、線溶活性化マーカー(PICなど)も何らかの形で、DIC病態診断に必要な項目として取り込むべきと考えられます(TAT&PIC)。
このような分子マーカーを診断基準に組み込むことで、有用な分子マーカーの普及にもつながるものと確信しています。
DIC診断基準は、治療に直結する(患者の予後に直結する)ものですから、十分な議論の上にも、早々により良い診断基準が登場することが望まれます。
内山俊正: 厚生省DIC診断基準の背景—その成立から現在まで—. 日本血栓止血学会誌2010; 21: 562-571.
関義信: 病院規模別にみたDIC診断基準のとらえ方および活用方法の現状と今後望まれるもの. 日本血栓止血学会誌2010; 21: 572-577.
久志本成樹:外傷急性期凝固異常とDIC診断. 日本血栓止血学会誌2010; 21: 578-587.
丸藤哲, ほか: 急性期DIC 診断基準の特徴と今後の展望. 日本血栓止血学会誌2010; 21: 588-594.
窓岩清治: 感染症DICを考慮した現厚生労働省DIC診断基準の検討. 日本血栓止血学会誌2010; 21: 595-599.
和田英夫, ほか: プロスペクティブスタデイからみたDIC診断基準. 日本血栓止血学会誌2010; 21: 600-605.
森下英理子, ほか: DIC診断に関する部会員アンケート調査結果. 日本血栓止血学会誌2010; 21: 606-611.
(続く)厚生労働省DIC診断基準の改訂へ(2)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| DIC