2012年06月29日
血友病A外科手術時の第VIII因子製剤とインヒビター発症率
現在、血友病治療の場における最も重大な問題点は、インヒビターの発症です(参考:後天性血友病)。
特に、外科手術時に大量の第VIII因子製剤を輸注された場合に、インヒビターを発症しやすいのではないかとの考えがありました。
今回紹介させていただく論文は、この点の検討を行っています。
「軽症&中等症血友病Aに対する外科手術時の大量第VIII因子製剤輸注とインヒビター発症率」
著者名:Eckhardt CL, et al.
雑誌名:Br J Haematol 157: 747-752, 2012.
<論文の要旨>
軽症および中等症血友病A患者においてインヒビターの発症は最も重大な合併症です。
このような患者では手術時の大量第VIII因子製剤(FVIII)の使用が、インヒビター発症の重要な危険因子ではないかとの考え方があります。
著者らはこの点を明らかにするための前向き試験を行いました。
手術に際して5日間以上にわたりFVIII10,000単位(または250U/kg)以上のFVIIIが必要になった軽症および中等症血友病Aが連続的に全例登録されました。
条件に一致した46症例(年齢中央値54歳)についての検討となりました。
FVIII遺伝子解析の結果、20種類のミスセンス変異が明らかになりました。
遺伝子組換え製剤は65%、血漿由来製剤は35%で使用されました。
また、間欠的静注が41%、持続投与が57%で行われました。
2症例において術後に低力価インヒビターを発症しました。
軽症〜中等症血友病A患者において、手術時の大量第VIII製剤投与に伴うインヒビター発症率は4%と考えられた。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:03| 出血性疾患