金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年07月15日

出血性疾患(血友病ほか)における血栓症

出血性疾患において血栓症を起こすこともあるという、逆説的な報告です。

たとえば、血友病などの患者さんにおける止血コントロールは大きく進歩したために、今後は血栓症対策が大切になってくるのでしょう。

参考:血友病後天性血友病


「まれな出血性疾患における血栓症」

著者名:Ruiz-Saez A.
雑誌名:Hematology Suppl 1: S156-S158, 2012.


<論文の要旨>

凝固因子の先天性欠損症は、通常は一生出血傾向をきたします。

血友病A&B、von Willebrand病のみならず、先天性フィブリノゲン、FII・V・VII・X・XI・XIII因子欠損症、複合因子欠損症も知られており、多様な臨床症状を示します。

逆説的ですが、これらの出血傾向をきたす疾患で、動・静脈血栓症をきたしたという報告もあります。


血友病患者における血栓症の病態は多様であり、中心静脈カテーテルの長期間留置、手術時の強力な補充療法、バイパス製剤の使用、先天性または後天性血栓性素因の共存などが原因として知られています。

その他のまれな出血性素因に関しては、無フィブリノゲン血症・FXI&VII因子欠損症での血栓症が報告されています(若年者の報告もあります)。

症状のない軽症の欠損症例では、補充療法の有無に関わらず抗血栓療法を考慮した方が良い場合があります。


血栓症の既往のある症例では、出血性素因のみならず血栓性素因も共存していないか検査すべきです。

全症例で言えることですが、心血管疾患危険因子のコントロールを行っておくべきです。


<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| 出血性疾患