金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年10月12日

軽症血友病の抗血栓療法:急性冠症候群(ACS)

論文紹介をさせて続けさせていただきます。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


「先天性出血性素因を有した症例における急性冠症候群の治療とその経過」

著者名:Lim MY, et al.
雑誌名: Thromb Res 130: 316-322, 2012.


<論文の要旨>

先天性出血性素因を有した症例における急性冠症候群(ACS)の治療ガイドラインは存在しません。

著者らは、自施設で2000〜2011年の間に治療された軽症血友病およびvon Willebrand病における急性期&慢性期ACS治療の経過を調査しました。


対象期間中、8症例(年齢中央値72歳)が10回のACSを発症していました。

救急部で治療を受けた4例中3例ではアスピリン325mgと未分画ヘパリンの投与を受けましたが出血の合併症はありませんでした。


8例で、10回の冠動脈造影が施行されました。

凝固因子製剤の予防投与が6/10回(60%)で行われませんでしたが、出血の合併症がみられたのは1/6回(17%)(そけい部の血腫)のみでした。


2例では、凝固因子製剤とともにbare metal stents治療とGPIIb/IIIaインヒビター投与が行われましたが、急性期出血の合併はみられませんでした。


6/10回では外来でのアスピリン投与が行われ、2症例では2種類の抗血小板薬による治療が1ヶ月間行われましたが(凝固因子製剤の補充はなし)、出血の合併症はありませんでした。


中央値8.5年(1〜11.5年)の経過中、5例中2例でアスピリン投与中の小出血がみられました。


以上、軽症の出血性素因においては、凝固因子製剤の補充を行わなくても、冠動脈造影やACSの急性期治療を出血の合併症なく行えるものと考えられました。 

短期間の抗血小板薬併用療法も問題なく、長期間のアスピリン投与でも出血は軽症にとどまるものと考えられました。

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47| 出血性疾患