膝関節置換術施行の血友病患者と術後感染症
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「膝関節置換術を施行した血友病患者の術後感染症の予防」
著者名:Rodriguez-Merchan EC.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 477-481, 2012.
<論文の要旨>
膝関節置換術(TKA)後の術部位感染症は、通常平均1%ですが、血友病患者(Persons with hemophilia : PWH)では約8%と高率になります。
著者らは、なぜ血友病患者では高率なのか、予防する方法はあるのかについて、PubMedとCochrane Libraryで検索しました。
重要と考えられる論文(TKAを施行したPWHの感染予防の方法を述べている論文)のみを抽出しました。
術部位感染症の一般的な危険因子は、免疫不全状態、術前の膝関節感染症の存在でした。
TKA感染症の起因菌として最も多かったのはMRSAでした。
術前の全身性細菌検査は重要と考えられました。
MRSA感染対策としては、術前の鼻腔MRSAの除菌(ムプロシン軟膏3日間)が勧められます。術前の抗生剤による予防治療も、感染率を低下させるのに有効です。
PWHでは、危険因子がさらに3つ加わり、不充分な止血、HIV陽性、中心静脈カテーテル(CVC)を挙げられました。
TKA施行のPWHでは術後2〜3週間にわたり充分量の凝固因子製剤を使用することも感染率を低下させます。
CD4が200/μL未満のHIV感染者では、感染症が疑われた場合には速やかに充分な治療を行うこと、そして、手術を行うことの利点と危険性を慎重に評価すべきです。
カテーテルのケアに関しては厳重な手洗いと無菌操作は必須です。
もし、TKAの適応でない場合には、関節鏡的膝関節滑膜切除術によっても数年間の疼痛暖和が期待できて、TKA施行までの期間延長させることができます。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 出血性疾患