金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年10月19日

長期間作用型第VIII因子部分インヒビター(TB-402)の中和

論文紹介をさせて続けさせていただきます。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


長期間作用型第VIII因子部分インヒビター(TB-402)の中和戦略 」

著者名:Tangelder M, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 1371-1378, 2012.


<論文の要旨>

TB-402は、第VIII因子に対する部分的抑制効果を有した抗体で、長時間作用型の抗凝固剤として開発中です。

TB-402による第VIII因子活性抑制を中和できるかどうかについて、in vitroでrhFVIII、人血漿由来FVIII(hpd FVIII)、遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)、バイパス製剤であるFEIBAおよびプロトロビン複合体製剤(PCC)を添加して検討しました。


12人の被験者に対してTB-402 620μg/kgの1回投与48時間後に、プラセボ、rhFVIII 35IU/kg 、rhFVIII 70IU/kgのいずれかの投与にふり分けられました。

TB-402濃度、FVIII活性(FVIII:C)、APTT、トロンビン形成能は、8週間にわたり測定されました。


その結果、TB-402はFVIII:Cを30%抑制し、APTTを4.5秒延長させ、トロンビン形成能のピーク値をコントロールの56±13%にまで抑制しました。

TB-402 10μg/mLの存在下では、rhFVIIIはFVIII:CとAPTTを正常にまで回復させました。

TB-402のトロンビン形成能に対する抑制効果は、rhFVIII、hpd FVIII、rhFVIIa、FEIBA、PCCにより完全に中和されました。


TB-402の半減期は14.2日間でした。TB-402は、内因性のトロンビン活性を約35日間にわたり23%抑制しました。

rhFVIIIa 35IU/kgの輸注の効果は軽度でしたが、rhFVIIIa 70IU/kgはFVIII:Cを回復させAPTTを前値にまで短縮させ(9時間持続)、トロンビン形成能を回復させました(約3時間持続)。


以上、TB-402は長時間にわたり安定して抗凝固活性を発揮し、rhFVIIIほかの凝固因子製剤は、TB-402を一時点に中和するものと考えられました。今後の臨床応用が期待されます。

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:41| 出血性疾患