金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年10月21日

TFPIインヒビター(BAX499)の作用機序と血友病治療

論文紹介をさせて続けさせていただきます。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


TFPIインヒビター(BAX499)の作用機序と血友病治療」

著者名:Chang JY, et al.
雑誌名:Thromb Res 130: e151-157, 2012.


<論文の要旨>

凝固阻止因子経路インヒビター(TFPI)を抑制することでトロンビン産生を促し、血友病患者の出血の予防や治療に応用しようとする考え方があります。


著者らは、TFPIのインヒビターであるアプタマー(BAX499)とTFPIの相互作用について検討しました。

血友病患者より採取した第VIII因子欠乏血漿に対するBAX499の影響は希釈PT時間で評価しました。


その結果、BAX499がTFPIに結合した後に、TPPI/ BAX499複合体は親和性は低下するもののXaに対する抑制効果を有していました。

外因系Xase活性法では、BAX499はTFPIによる外因系Xase活性を遅らせました。加えて、BAX499はTFPIによるprothrombinase複合体の抑制を消失させました。


BAX499は、第VIII因子欠乏血漿における希釈PT時間を短縮させ、血友病A患者(インヒビター有無の如何にかかわらず)から採取した検体において全血凝固時間を短縮させました。


以上、BAX499は、インヒビター保有血友病A患者の止血治療のためバイパス製剤として加えることができるのではないかと考えられました。

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 出血性疾患