2012年10月24日
免疫不全ウィルスと凝固マーカー
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「サル免疫不全ウィルス(SIV)感染霊長類で凝固マーカーが病気の進行を予知する」
著者名:Pandrea I, et al.
雑誌名:Blood 120: 1357-1366, 2012.
<論文の要旨>
HIV感染症は心血管合併症を増加させることが知られていますが、その機序は不明です。
血中Dダイマー(DD)は、HIV感染患者の死亡率や心血管疾患発症と関連していることが知られています。
著者らは、病原性サル免疫不全ウィルス(SIV)に感染したアカゲザルとブタオザル(PTMs)、非病原性SIVに感染したアフリカミドリザル(AGMs)とスーティーマンガベイを用いて、心血管病変部位の数と、血中DDを比較しました。
AGMsからのSIV(SIVagm)に感染したPTMsにおいては、DD値はAIDS進展や死亡率の指標となっており、心血管病変とも関連していたため、SIVagmに感染したPTMsはHIV関連心血管疾患を研究する上での理想的な動物モデルになっていると考えられました。
病原性SIV感染症においては、DDは感染直後より上昇し、免疫活性化・炎症やmicrobial translocation (MT)のマーカーと強く相関していましたが、ウィルス量との相関は弱かったです。
SIVagmに感染したAGMsに対してエンドトキシンを投与すると、DDは有意に上昇しました。
以上、SIV感染における凝固亢進状態や心血管病態は、少なくとも一部は過剰な免疫活性化やMTの結果と考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25| 出血性疾患