2012年12月21日
異常フィブリノゲン血症の妊娠:ヘパリン&凝固因子製剤
論文紹介です。
「異常フィブリノゲン血症の妊娠管理におけるジレンマ」
著者名:Munoz J, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 775-777, 2012.
<論文の要旨>
先天性の異常フィブリノゲン血症はフィブリノゲン遺伝子変異をきたした稀な疾患であり、現在までに約400家系の報告があります。
参考:先天性凝固因子異常症1、先天性凝固因子異常症2(インデックス)
著者らは20才の異常フィブリノゲン血症(妊娠7週)の報告を行っています。
この症例は、妊娠初期に2回の自然流産歴があり、血栓症の家族歴もありました。
血液内科、産婦人科、周産期センター、輸血部、麻酔科の協力のもとで診療が行われました。
妊娠中は、フィブリノゲン製剤の輸注(フィブリノゲン値を100mg/dl以上に維持するように)と、低分子ヘパリンによる抗凝固療法が行われました。
患者はとくに問題なく満期出産となり、出産後6週間はフィブリノゲン製剤輸注と抗凝固療法が継続されました。
補充療法と抗凝固療法を併用することで、妊娠期間中出血と凝固バランスが良好に維持されたものと考えられました。
以上、異常フィブリノゲン血症患者の妊娠管理にあたっては、多くの診療各科の協力が大切と考えられました。
(参考)
異常フィブリノゲン血症:
・約50%が無症状、約25%が異常出血、約15%が血栓傾向をきたします。
・出血症状と血栓症の両者がみられる症例もあります。
・女性では自然流産をきたすことがあります(参考:抗リン脂質抗体症候群)。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07| 出血性疾患